第五十三話 対イストニア帝国 その1
雲ひとつない空の下、双方ともにドラなどが鳴り響き、味方を鼓舞する言葉をかけ、ついに戦争の始まりを告げる。
両者ともに小細工なしの正面からの戦いになる模様だ。
アースハイト側は国王自ら出陣している。
俺たちに行かせる以上、自分も先陣を切るつもりだったみたいだけどそれは当然のごとく即座に却下されている。
なので、本陣で指揮を執っている。
本国では国王不在の間、アレク兄さんとセフィ姉さん、そしてロイのお母さんと側近達が国内の事に対応しているみたいだ。
アースハイト陣営はイストニア帝国の第二王子レドニンに警戒していたけど、やはり軍には帯同していないようだった。
むしろ本陣から遅れ、セガール平原に向かっているという事で何かしら策があるにしても序盤から何かを仕掛けてくる訳ではなさそうだった。
だからこそ、俺とロイの作戦にかかってくる。
イストニア帝国が仕掛けてくる前に戦況を決定付けれれば……。
俺とロイは自分達の準備をしながら戦況を見る守る。
最初にイストニア帝国から魔法が放たれてきた。
それをアースハイト王国も魔法で迎撃ち、双方とも魔方陣を発動させ、魔法障壁を展開する。
両国とも魔法障壁を破るように相手の魔法障壁に向け、魔法を放つ応酬になった。
俺とロイはこの魔法の応酬で拮抗を保っている間に相手本陣に突入する作戦なので、前線からそろそろ動こうかと準備していた時だった。
イストニア帝国より広範囲に渡る巨大な風魔法、竜巻のようなものが放たれ、アースハイト陣営に迫ってきた。
「おい、ロイ。あれってもしかして昨日言ってたソニンって奴がやったのかな?」
「そうかもしれないけどハッキリとは言えないな」
その威力はなかなかのもので、このまま魔法障壁に接触すれば破壊されかねない。
かと言って俺が今の場で迎え撃てば、能力が高いやつが近くにいるという事と、居場所がバレてしまい本陣突撃が難しくなってしまう。
その時だった。
アースハイト陣営から水龍が現れて竜巻に突進する。
……きっとアリィの魔法だな。
竜巻と水龍は激しくぶつかり合い双方とも吹き飛んだ。
……アリィちゃんと周りに言ってから魔法使ったんだろうか?
みんな、急に現れた水龍に動揺してなかったらいいけど。
その後、少しの間、両者共に魔法が止まる。
おそらく双方の魔法使いが、今の光景にあっけに取られたんだろう。
俺は決断した。
「ロイ!行くぞ!」




