第四十一話 また気を失ったみたいです
ここはどこだ?
城は焼かれて、ドラゴンが暴れている。
でも、俺は動けない。
どうやらドラゴンにやられたらしい。
シャーリーは!?
気付けばシャーリーがドラゴンに襲われようとしている。
隣にはロイとアリィが倒れている。
嫌だ!
俺はもう大切な人を失いたくないんだーー……。
「……君!……ル君!……ハル君!!」
次の瞬間、俺の目の前にはシャーリーがいた。
辺りを見回す。
そこは闘技大会の舞台だった。
記憶を辿る。
俺は必殺の一撃を出したけどそれをルイーズに受け流され、次の瞬間後頭部に衝撃を受けて気を失ったんだ。
まさか、ここまで実力差があるとは……。
「おっ、もう大丈夫か?」
そう言って俺の視界に現れたのはさっきまで戦っていたとは思えないような元気なルイーズさんだった。
息も切らしていないし、怪我もない。
それが俺とルイーズさんの実力差を現している。
「……大丈夫です」
俺は実力差のショックから悔しさが込み上げ、こんな返答しかできない。
「まぁまぁ、そんな顔するなって! ハル君の気持ちはなんとなく分かるけど俺も結構ヤバかったんだから」
本当にそうだろうか?
俺にしたら大人と子供の差……いや、それ以上の差を感じたんだけど。
「ルイーズさんから見て……俺はどうでしたか?」
俺はルイーズに聞いてみた。
ルイーズさんは戦いながら俺の分析をしていたからだ。
「んー……例えて言うなら宝石の原石かな? 魔力を大きさとすればハル君はこの世界で一番の大きさと言えると思う。このままでも価値はあるけど研けば研くほど価値が上がるって感じかな? 要は力と技術の使い方を身体に覚えさせる事が大事って事かな」
ルイーズさんは俺が感じてる事をずばり言い当てる。
俺は『エターナル・ログ』の力を継承したけどその技術は使いこなせていないと感じている。
それをルイーズさんは一戦しただけで感じとった。
「と言っても剣術と身体強化魔法の応用の魔力操作に関してだけどね。他の魔法は見てないし、それに魔法は俺の専門外だから」
まぁ他の魔法に関しては知識で得たのと俺の魔力、無詠唱とかから考えてもこの世界で他から得られるのは少ない気がする。
「あの〜……ルイーズさんーー」
「分かってる分かってる! 俺もしばらくゆっくりするつもりだしな。ロイと一緒に鍛えてやるよ」
「ありがとうございます!」
ルイーズさんは俺が言切る前に言った。
とりあえず、俺の課題に対して少し光が見えた気がする。
「あ、ハル君、そのお嬢ちゃんに感謝しろよ? ハル君が倒れてすぐに観客席から飛び込んできたんだから。救護隊が駆けつけるより先にね。愛されてるね?」
「えっ!? 愛……とか……ゔぅ〜……ルイーズさん!」
シャーリーは顔を真っ赤にしてルイーズさんに詰め寄っている。
ルイーズさんとシャーリーは初対面のはずなのに。
という俺もこれに対してどう反応していいのか……ヤバイ、顔が熱い!
「ん? まだそこまで行ってなかったか!? ゴメンゴメン! 聞き流して! じゃぁまた明日ゆっくり話そう」
そう言ってルイーズさんは出口に向かって行く。
残された俺とシャーリーは気まずかった。
「シャーリーあの〜……」
「あ、はい!」
「「……」」
「言い忘れてたけど、俺の事はこれから師匠と呼ぶように! それとこれからはハルって呼ぶから!」
不意に背後から声が聞こえた。
そこにはルイーズさんが戻ってきていた。
「あ、まずかったかな?」
俺とシャーリーは目を合わせて笑った。
「シャーリーありがとう」
「どういたしまして!」
そう言って俺とシャーリーは微笑み合う。
今はこれでいい。
まだまだ俺たちは若いんだから。
ルイーズさんは次こそ走って出て行った。
表彰式は明日らしいからまた明日会った時に話そう。
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一方、観客席では……。
「なんで……なんで!! あの場でルイーズさんは戻って声をかけるのかしら!?」
「アリィ……師匠は戦い以外の空気は読めない人なんだ」
落胆する二人の姿があった。




