第四十話 闘技大会 その8
俺は試合開始と同時に通常の身体強化魔法をかけ、一気にルイーズさんに詰め寄り切りかかった。
「なに!?」
俺は驚愕の声を上げる。
ルイーズさんは俺の斬撃に合わせ剣を動かし威力を、吸収するようにして何事もなかったかのように受け止めた。
いや、受け止めたというより完全に威力を吸収され、まるで切りかかったという事実がなかったかのようだ。
「太刀筋はなかなか……でもまだ自分が思ってるような動きにはなってないのかな?」
ルイーズさんはそんな離れ技をしながらも俺の分析をしている。
「くそ!」
実力差があっても諦める訳にはいかない。
俺は一旦距離をとってから勢いをつけて突きを繰り出した。
「突きのスピードもなかなか。それにちゃんと急所を狙えてる。でもまだまだ力の使い方が荒いかな?」
ルイーズさんは俺の突きを全部剣先で受けていた。
点を点で受け止める。
やっぱりこの人の実力は半端ない。
俺はロイとの戦いで使った突きからの変化技を出した。
「おっと! ……うん、戦いのセンスも良いみたいだ」
上半身を反らしてかわしながら言う。
チャンスとばかりに剣を引き寄せ詰め寄ろうとしたところで衝撃を受ける。
「うーん、チャンスと思ったんだろうけどちゃんと相手の様子も見ないとね」
ルイーズさんは上半身を反らしていたはずなのにすでに俺の懐に入り鳩尾に剣の柄の部分を、打ち込んでた。
「ぐっ!」
俺はひとまず、距離を取り状況を確認する。
おそらくさっきのは、身体強化魔法の応用で魔力操作して、対応速度を上げたのだろう。
しかし、俺が使うのと違って全然予備動作というか、魔力操作するような素振りみたいなのが一切なかった。
「さぁ次はどうくる? ハル君」
ルイーズさんは俺が動くのを待ってるみたいだ。
そっちが油断してくれるなら……。
俺は魔力を足と腕に集中させる。
「それを使うか。まだまだ粗削りだけどそれでも魔力切れにならない君はやっぱりスゴイね」
ルイーズさんは俺に言うけど俺は魔力操作に集中する。
そして……。
「受けてみろ!!!」
俺は一気に加速し詰め寄り斬撃を放つ。
ロイの時は足だけだったけど、今回は腕にも魔力を集めてる。
しかも、それだけじゃなくて……。
「ん? これは!?」
ルイーズさんが今日初めて動揺した。
俺は魔力操作だけじゃなくて、ドラゴンを倒した時みたいに剣にも魔力を漂わせた。
間違いなく一撃必殺。
しかし、次の瞬間驚愕の光景を目にする。
ルイーズさんは俺と同じように剣に魔力を流し、斬撃を受け流した。
「さすがに、今のはビックリしたよ」
ルイーズさんのその言葉を聞いた瞬間、俺は意識を失った。




