第三百八十二話 最後の晩餐 その1
「だいたいハルなーー」
「ロイ、飲み過ぎだ!」
「シャーリー? あの時ね、シャーリーとハル君はーー」
「おい、アリィ! 無理矢理シャーリーに俺の話を聞かせるな!」
「ははは! 愉快でいいわ! やっぱ酒を飲む時はこうじゃないとな!!」
「師匠飲み過ぎですって!」
「ラート君? ちょっとは私の相手もしなさいよ!」
「ソニン!? まさか間違って酒飲んでないか!? くそ、ほら!」
「……えっ、私はいったい!?」
最後の晩餐と言って始まった宴会も一時間がたつともう地獄絵図と化してきた。
案の定ロイとアリィは酔っぱらい、さらにはアドルノさんも酔っぱらって俺とラートが世話役みたいな感じになった。今ならラートとアイコンタクトでどんな連携も取れそうな気がする。
酔っ払ったロイは絡み酒となり、アリィはシャーリーの記憶を取り戻そうと俺の話をしているけど、酔っ払ったアリィが話すのはどうも逆効果な気がして止めている。恥ずかしがり屋のシャーリーが記憶がない人との過去を聞いて受け入れるとは思えないからだ。
自分から宴会をしようと言ったものの大変な事になっている。
さっきもソニンが間違って果実酒飲んでラートに絡みにいったし。すかさず解毒魔法かけたけど。……まぁほっといても面白そうだったかもしれない。
でも、俺はなんでこんな事言ったんだろうか?
「はい、ウィル君どうぞ」
「うむ」
「……」
テーブルの端では熟年夫婦のようにルルが嬉しそうにウィルに果実酒をついで二人だけの世界に入っている。あいつら……。
と思ったら解毒魔法をかけたソニンがその二人を物凄い形相で睨んでいる。ヤバイか……?
「ソニンちゃんゴメン! これどうぞ」
「えっ!? あっ、ありがとう」
そこにラートがさっきソニンに相手してって言われたからか、果実水を持ってソニンに差し出すとソニンは驚きながら嬉しいのを隠してそれを受け取る。
……なんだこれ? 俺はなに……?
くそぉぉおおお!!! やってられるか!!!
俺は目の前にあった果実酒を飲み干し、ぬるくなったエールに氷魔法を少しかけて冷やして一気飲みした。




