第三十六話 闘技大会 その4
試合開始と同時に俺とロイは身体強化の魔法をかける。
そして、お互い相手の出方を伺う。
あたりを静寂があたりを包む。
しかし、それもつかの間、ロイが一気に間合いを詰めてくる。
その速度は常人なら見えないくらいだろう。
ロイは距離を詰めると俺の視界から消える。
その瞬間、後ろから気配を感じ、俺は反射的に剣で受け止める。
そして、俺はロイの剣を弾き返して距離を取った。
「これに反応するとは。さすが、ハル」
「次はこっちの番だ!」
俺はロイに詰め寄ると普通に斬りかかる。
ロイは俺が普通に斬りかかったのを警戒して後ろに飛び、避けようとした。
その瞬間、俺は一気に加速しロイに突きを放つ。
さすがのロイも空中では態勢を変えられないだろう。
ロイは驚いた表情をしながらも剣で受けた。
しかし、威力までは殺せず大きく後方へ吹き飛ぶ。
俺はまさか突きを剣で受けるとは思わなかった。
点を線で受けるのは難しい。
しかし、それが出来るという事はロイの技術を物語っている。
「まさか、そんな風に仕掛けてくるとはな」
ロイは吹き飛んだと言ってもダメージはないようだ。
ロイは態勢を整え、剣を構える。
「ハル、全力でいくぞ!」
ロイはそう言うと一気に攻勢に出る。
身体強化の魔法を使っている分、動きが早く、ロイの怒涛の攻撃を受け止めるのが精一杯で反撃の機会を伺えない。
徐々に俺は劣勢に陥る。
その時だった。
ロイは攻撃の最中に一つの罠を張った。
俺が剣で攻撃を受けようとした時、俺が攻撃を受ける直前に剣を引き寄せ、突きを繰り出した。
「くっ!」
俺は咄嗟の判断で左手でガードする形を取った。
直撃は避けたものの俺の左手肘付近に剣が刺さり出血する。
俺は後ろに飛び退き態勢を整える。
「ハル、降参するか?」
「するわけないだろ!」
俺はそういうと最後の賭けに出た。
右手だけで、剣を構え直し、呼吸を整えロイに詰め寄る。
「無駄だ!」
ロイは俺の動きに合わせてカウンターを入れようと剣を構える。
そこである秘策を実行する。
俺は魔力を両足に集中させる。
そして、魔力を集中させた足で地面を踏み込み、一気に加速する。
それは先程の身体強化の魔法よりはるかに早いスピードだった。
「……」
ロイがカウンターを仕掛けるより早く俺はロイの懐に入り剣先を目の前に突きつけた。
『……勝者ハル!』




