第三十五話 闘技大会 その3
闘技大会準決勝。
俺は少し早めに起きて庭で準備運動をする。
俺とロイの対戦成績は五分五分。
どちらに勝ちが転んでもおかしくない。
だとすれば勝敗を決するのは一瞬。
「ふぅ〜」
俺は柄にもなく緊張している。
それはロイの実力が相当のものだからだ。
『エターナル・ログ』の力を継承する前は、ただ単にロイが少し上手だと思っていたけど、力と知識を継承した今、ロイは普通よりかなり上の実力があるのが分かる。
さらに、無詠唱の習得で精霊の加護が強くなり、能力が底上げされた今、剣術ではトップクラスだろう。
そんなロイに対抗する手段は……。
「ハル君……」
ふと声のする後ろを、振り返るとシャーリーがいた。
「シャーリーどうしたの? こんな朝早くに」
「あの……ハル君! 今日は頑張ってね! 私はハル君を応援してるから!」
シャーリーはそれだけ言うと、来た方向に走って帰って行った。
わざわざそれだけ言いに来てくれたのか。
俺は一瞬呆気に取られたけど徐々に嬉しさが込み上げてきた。
シャーリーが俺を応援してくれる?
負けられるハズがない!
一瞬、俺が勝った場合アリィがロイに詰め寄る姿が浮かんだ……けど打ち消した。
『さぁ〜闘技大会もいよいよ佳境だ! 準決勝は予想外といぅかあらゆる意味で異色の対決。紹介しよう! 我がアースハイト王国第二王子ロディーン=アレン=アースハイト!』
『わぁぁぁぁぁ!!!!』
『きゃぁぁぁ!!! ロディーン様カッコ良い!!』
歓声の中に混じる黄色い声援。
間違いなく今、アリィは不機嫌だ。
今日はいつになく進行役の司会が、観客を煽る。
『対するは幻想級のドラゴンを一人で討伐した英雄ハル!!!』
『わぁぁぁぁぁ!!!』
黄色い声援はあまりなかった気がするけど、俺にはシャーリーがいる。
シャーリーから応援してもらえるだけで十分だ。
それに昔を考えれば、歓声をもらえるなんて思いもしなかった。
『それでは両者中央に寄ってくれ!』
司会の言葉により、俺たちは中央による。
そして、周りを見渡しある事に気付いた。
「ロイ、あれ……」
ロイは俺が示した方向を向く。
そこには救護隊に混じるアリィとシャーリーがいた。
「……二人にバレてたみたいだな。こうなった以上無様な試合をしたら余計に恐い。全力で勝負だ」
「おぅ! これで手抜いたらある意味余計に恐いしな」
でも、なんだかんだ言って止めずに支えてくれるのは嬉しい。
たぶん、ロイも同じ事思っているだろう。
『では、用意はいいか? ……始め!!!』
司会の合図とともに、俺とロイの戦いが幕を開けた。




