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第三十三話 闘技大会 その1

 闘技大会初日。

 あれから俺とロイは二人の目を盗んでは模擬戦を行っていた。

 対戦成績はというとほぼ五分五分だ。

 俺は身体が慣れてきたとはいえ、今まで魔法がメインだっただけに接近戦での経験値はロイの方が高い。

 だから、勝負どころでの判断の良さはロイが上回っている。

 そこを継承した力でなんとか五分にもっていけているという感じだった。


 ルイーズさんはというと到着がギリギリになるという事で決勝の前の日に到着するそうだ。

 ちなみ闘技大会は5日間で行われる。

 闘技場には魔法陣がひかれており、万が一死に至るダメージを受けても死なないようになっている。

 近くに回復魔法に腕がある人達による救護隊が待機してて今までに死人が出た事はないらしい。


 ルイーズさんはシードで決勝のみ、俺はドラゴンを倒したといぅ事で準決勝からのシードとなっている。

 ドラゴンを倒したと言ってもあれは魔力だから剣術というより……って感じだったけど周りを納得させるにはこれくらいじゃないといけないとの事だった。

 ロイは実力はあると思うけど、実績がないのとシードにすると王族だからコネと言われなねないとの事で予選からの出場となっている。

 だから、今日はロイの応援に来ている。


 「ロイ、緊張して足元すくわれるなよ」

 「あぁ、王族として無様な姿は見せられないしな」


 ロイはしっかり頷き返答する。

 落ち着いているように見える。

 これなら大丈夫だろう。


 「ロイ君頑張って!」

 「ロイ君、負けたら許さないからね?」


 シャーリーとアリィもロイに言葉をかける。

 どちらがどちらの言葉か……言うまでもないだろう。

 アリィは冗談で言ったのかもしれないけど冗談に聞こえない口調で言った。

 一瞬、ロイの身体に緊張が走るのが分かる。

 ロイの一番の敵はアリィの圧力(プレッシャー)かもしれない。

 ロイ……俺は何があってもおまえの味方だ。

 ロイは圧力(プレッシャー)と戦いながら俺たちの元を去る。

 俺たちも観客席に向かい試合を待った。


 「予選第1組第3試合始め!」


 ロイの戦いが始まった。

 相手はランクCの冒険者だ。

 ロイの実力がどうか……そして俺の実力がどのあたりにあるのか。

 興味深い試合だ。

 しかし、勝負は一瞬にしてついた。

 ロイは一気に間合いを詰めると相手の剣を叩き落とし剣先を相手の眉間に突きつけている。

 観客は呆気に取られて静まり返る。

 しかし、次の瞬間には大きな歓声が上がった。


 「ロイ君は強いと思ってたけどここまでとは思わなかったです!」

 「さすがロイ君。私の将来の旦那さんだけあるわ」


 シャーリーとアリィはロイの戦いに驚いているようだ。

 という俺もまさかこんな一方的な試合になるとは思わなかった。

 でも、よく考えるとダンジョンでもロイは魔物を剣で倒していたし、そもそもダンジョンはいろいろな要素があるとは言えランクCの冒険者でも生存率が低い。

 その中でもロイは危ない場面はなかった。

 最後の数による物量的な問題と救護する者がいたという場面だけだろう。

 さらに、おそらく完全ではないとはいえ『エターナル・ログ』の力を継承した俺と五分五分で渡りあえているのを考えれば当然なのかもしれない。

 とにかく一般的なところを自分の視点基準の考えるのはやめないといけない。

 また、ロイに突っ込まれてしまう。


 「ロイ君も一戦に勝って少し落ち着いたみたいね」


 アリィは言う。

 でも、俺は分かっていた。

 ロイはもう一つの圧力(プレッシャー)に打ち勝てた事の安心感だと。

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