第三百十五話 師匠
あの時、俺たちの目の前に師匠……魔人化したルイーズさんが現れた。
ダビドが勝手にいろいろ話したけど、ルイーズさんは奥さんと子供を……。
「ハル、やっぱりルイーズさんは魔人化してたよ……。俺がいくら叫んでも表情の一つも変わらなかった」
「ロイ……」
「どれだけ叫んでも、剣を交えても師匠は何の反応も示さなかった……心を失っているようだった。でも、そりゃそうだよな。奥さんと子供をダビドに……ハル俺はダビド……ゴルゾーラ教を絶対許さないっ!!」
同じだ……。今のロイは俺がシャーリーを守れなくて自分を憎み、ダビドを憎んで心を憎しみで埋めようとしていた時と一緒だ。
このままじゃこの心の闇をゴルゾーラ教に利用されてしまう。
「ロイ、戦う理由って何だろうな?」
「……ハル?」
「俺もロイと一緒の気持ちだ。シャーリーを守れなくて自分を憎み、ダビド、そしてゴルゾーラ教を憎んでいた。でも、なんだろうな? 今は少し違う……それを教えられた」
「教えられた……? 誰に? 何を?」
「俺はシャーリーに言われたんだ。憎しみ心奪われちゃだめ、怒った顔は嫌、笑って……ってな。その時教えられたんだよ。俺の戦う理由は憎しみからくる復讐じゃない。俺はシャーリー……大切な人達を守る為、そして大切な人達が笑って……笑顔で楽しく過ごせる為に戦ってるってな」
俺はあの時心を憎みで埋め、魔人化しかけていた。俺は戦う理由を履き違えていたんだ。きっと戦う理由を間違った時、悲しむ人が出てくるだろう。憎みが憎みを生み復讐が復讐を生む。
だからきっと戦う理由は間違っちゃいけないんだ。
ロイは俺の話を黙って聞いて目を閉じていた。




