第三百六話 シャーリー救出戦 その7
魔人化した女がダビドの元へ駆け寄るのを見た俺はシャーリーの方へ行こうかと一瞬視線を送った。
すると、岩砲弾の盾になっていた魔人化した男は俺の思惑に気付いたのか、俺と同じようにシャーリーに視線を送る。
不味い! 何かする気だ!
「くそっ!!」
俺は嫌な予感がして、男の方へと詰め寄る。
でも、俺が男へと肉薄する前に男の右手がシャーリーの方へ向けられる。
何をするつもりだ!? 間に合え!!
俺は一気に男に肉薄すると魔力操作して剣に魔力を纏わせて斬りつけた。
「シャーリーっ!?」
俺の剣は男の抵抗もなかった為、男の身体を一刀両断する。しかし、男がしようとした事は防げず男の右手から放たれた黒い球がシャーリーを覆い、黒い膜を張る。
「ふ、ふははは! よくやりました! さて、ハル君、その膜は普通では破れませんよ? それは魔人化人間の命と引き換えに放った闇の魔力の塊、それこそ並大抵では破れません。しかし、闇の精霊の加護を受けている我々は中に入る事が出来ます。……それが何を意味するか分かりますね?」
ダビドの言っているそれは暗に自分達なら膜の中に入ってシャーリーをどうとでも出来ると言う事だろう。……くそっ! あと少し早ければ!!
「分かってくれましたか? ……でも、いったいどうやってここに……? なぜ場所が分かったのでしょう……?」
ダビドは俺が動かないのを確認すると俺に問うような……自分に自問自答するかのように呟く。
「……まぁいいでしょう。どうやってかは知りませんがあなたは私達の居場所……厳密に言えばこの娘の居場所は分かるようですね。私達の居場所が分かるなら今回のように今までに来ていてもおかしくなかったですしね」
ダビドは自分で自分を納得させるように呟くとシャーリーの方へ歩を進めた。




