第二百七十八話 アースハイト攻防戦 その10
「っ!? 来るぞ!!」
向こうは話をするつもりなどないのだろう。すぐに戦闘態勢に入っている。突然の動きに戸惑いながらも俺はドラゴンの攻撃からみんなを守る為に魔法障壁を前面に構築する。
本来なら魔法障壁は自分の周りに構築するものだけど俺は少し応用して使用した。
なぜなら、みんなまだドラゴンの存在感の前にまだ身体が言う事をきかないのか動けないような様子だったから。特に女性陣は顕著だった。みんなドラゴンを前にしてから動いていないし言葉も発していない。
そして、戦闘隊形を整えてすらいない。
『ガァァアアア!!!』
ドラゴンが大きく息を吸い込んだ後に口から炎を吹き出した。その範囲は広く、俺の魔法障壁の面を超えた範囲まであり、魔法障壁が張ってあるところ以外は火が地面に当たり草木を燃やす。
しかし、以前俺が倒したドラゴンの炎よりは威力が低いのか草木が燃える程度で地面がガラス状になるような事はなかった。
それでも、炎の威力は高く、普通の火属性の魔法よりは威力があるだろう。炎は一気に周囲の温度を上昇させる。
「みんな態勢を整えろ!!」
俺は魔法障壁を展開させながらみんなに叫ぶ。
みんなはハッとなってそれぞれ自分のいるべきポジションへと動いた。
「まさかこの俺が動けなかったとはな」
「本当に。こんなのを倒したとはハルはもう化け物だな」
俺の両脇で態勢を整えたウィルとロイが言葉を発する。
この口調なら大丈夫だろう。少しは緊張が取れたようだ。
「何言ってんだ? この戦いが終わったらおまえらも仲間入りだろ?」
俺の言葉に二人はニヤリと笑みを浮かべる。
「残念だがおまえ達にはここで死んでもらう」
ダグマルの言葉と共にドラゴンの炎が強くなった。




