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第二十ニ話 追憶

 俺は夢を見ていた。


 父さんと母さんが優しい顔で俺を見ている。

 俺は『父さん! 母さん!』と声を出したかったけど声が出ない。

 二人は優しく微笑みながら俺の頭を撫でてくれる。

 周りを見ると、どこかのお城みたいだった。

 俺が住んでた家と違って照明が整い、煌びやかな室内。

 そして、父さんと母さんの奥にはたくさんの人がいた。

 みんな俺たち三人の事を微笑ましく見ている。


 手足を動かそうとするけど、自由に動かす事が出来ない。

 俺はどうやら赤ん坊みたいだ。

 俺はベッドに横になりながら周りの様子を伺っていると何を話しているか分からないけど、慌ただしい様子だった。

 父さんと母さんも難しい顔をしている。


 「オギャー! オギャー!」


 俺は声を出そうとしたら泣いていたみたいだ。

 すると、父さんと母さんはすぐに俺の元に走ってきて抱っこしてくれた。

 俺の前では難しい顔をせず、優しく微笑みかけてくれる。

 父さんと母さんと三人で暮らす……まるで夢のようだ。

 でも、そんな日は長く続かなかった。


 何やら一人の兵士らしき人が慌ただしく部屋に入ったかと思うと母さんは俺を抱き、父さんの元へむかった。

 父さんと母さんは難しい顔をして何かを話している。

 俺は何とか声を出そうとするも出るのは鳴き声だけだった。

 すると、母さんが目から涙が流れ出し、泣き出した。

 父さんは母さんの肩を抱いて、見覚えのあるネックレスを俺にかける。

 そして、父さんと母さんが俺に向かって何か言っている。


 『ハル、愛している』


 そこだけはなぜかハッキリと分かった。

 すると、俺の周りを光が包み込む。

 次の瞬間、父さんと母さんは消え、真っ暗な闇に包まれた。


 「父さん! 母さん!」


 俺は必死に声を出そうとした。

 しかし、無情にも俺は真っ暗な闇の中に落ちていった。


 「……ル君……ハル君……ハル君!」


 誰かに呼ばれる声が聞こえ、俺は目を覚ました。

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