第二十一話 ケリつけます
俺は目を開ける。
すると、光に包まれる前の光景と同じだった。
身体は相変わらず動かなかったけど、すかさず俺はエターナル・ログで手に入れた知識から魔法を繰り出す。
『ナニ!?』
俺は重力魔法を反発させるようにして繰り出しドラゴンの重力魔法と中和させた。
『イッタイナニガオキタノダ!?』
ドラゴンは俺の変わりように驚いているようだ。
しかし、俺の方も先ほどまで受けたダメージとエターナル・ログの副作用で体力を消耗していた。
立つのもやっと。
さらに息はしづらく目の前の景色が歪む。
まるでドラゴンが三体いるようだ。
しかし、俺は諦める訳にはいかない。
「聖なる光よ。我が力となり対象を癒せ」
「聖なる治癒光」
聖なる光が俺を包み傷を癒し体力を回復させる。
今の俺なら分かる。
これは単なる治癒魔法ではなく治癒魔法に光属性を掛け合わせた上級魔法だ。
出血は止まり、脇腹の痛みも癒えた。
そして、さっきまで鉛のように重かった身体が軽くなった。
俺は詠唱が聞こえた方を向くとシャーリーがいた。
「シャーリー!!」
「はぁはぁ……ハル君……大丈夫?」
シャーリーは肩で息をしやっと立っているような状態だった。
おそらく魔力を相当使ったのだろう。
シャーリーはまだ訓練を始めて間もない為、魔力量もあまり増えていない。
その中、上級魔法を使ったのだから。
『コザカシイコムスメガ!』
俺がシャーリーに気を向けている間に、ドラゴンはシャーリーに向け爪を振りかざした。
「きゃ!!」
俺はすかさず魔法の障壁をシャーリーにかけた。
しかし、威力を全部抑えらずシャーリーが吹き飛び地面に身体をうちつけられた。
俺はシャーリーの元に駆け寄った。
「ハル君……が……無事で……良かった……」
「シャーリー!!」
シャーリーは頭から血を流し、身体中に傷が出来ていた。
俺は急ぎシャーリーに上級治癒魔法をかける。
すると、血も止まり、傷も癒えた。
しかし、シャーリーは衝撃と今までの精神的なショックからか意識を失っている。
意識を取り戻させるのは簡単だけどちょうどいい。
命に危険はないので、シャーリーにはこのまま少し寝ててもらおう。
俺はシャーリーを抱き抱え、安全な場所に移し、障壁をかけドラゴンに向き直る。
「おまえは絶対許さない……」
村の事、じぃちゃんばぁちゃんの事、シャーリーの事……絶対許せなかった。
そして、それを守れなかった自分。
シャーリーだけでも必ず守る!
俺はその想いを魔力に変える。
次第に魔力が身体を覆い、俺の中でリミッターが解除される。
さらに、魔力が溢れ出る。
『!? ソノカミノイロハ!? ソレハマサカカクセイ!? ヤハリオマエハ!』
気づくと俺の髪は銀色になっていた。
「俺はおまえを絶対許さない!!!」
俺は長期戦は不利だと判断し、魔力をありったけ自分の持っていた剣に纏わせる。
そして全神経を集中し、一気にドラゴンに飛びかかり首めがけて斬りかかった。
ドラゴンは俺の髪が銀色になった事に戸惑っていた事も動きが遅れた。
『バ、バカナ!?』
次の瞬間、まるでスローモーションのようにドラゴンの首が落ちた。
首が落ちる瞬間、俺はドラゴンと目が合った。
奴は驚愕した目をしていた。
そして、自分を倒した相手、つまり俺を最後まで睨みながら崩れ落ちていく。
その光景を見届けた後、俺は意識を失った。
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その頃、少し離れたところでは……。
『何!? 黒王竜が殺られた!? まさか……でも奴の気配がなくなった事を考えれば事実だろう。フォランの奴、何か罠を仕掛けていたか……。ふむ、これは少々計画の変更が生じる……とりあえず当初の予定通り、我が器を探すとするか。まぁ良い。まだハルは赤ん坊のはず。時間もある。それに所詮ハルの事は通過点に過ぎぬ』
不気味な影がうごめいていた。
章設定はしていませんがここで一区切りとなり第一章が終わりとなります。
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