第二百十話 ダンノームでの出来事 その5
「ハル、解毒魔法かけてくれ……」
「あっ、了解」
そう言えば昨日はすっかりみんなに解毒魔法かけるの忘れてたな。
この分じゃアリィも二日酔いになっているかもしれない。
全体にかけとくか。
宿屋全体にかけても他の人にとって悪い事じゃないし。
「ほら、どうだ?」
「あぁ、良くなった。まさか俺が二日酔いになるとは……」
いやいや、俺がいつも酔い潰れて寝てから魔法かけてなかったらいつも二日酔いだと思いますけど。
昨日はおっちゃん達が帰った後も宴会は続いた。
俺もダンノームは今までの国に比べて暑いので、身体が水分を欲しているのかお酒が進んでみんなに解毒魔法をかけるのを忘れてしまった。
でも、水分の代わりにお酒を飲んでいたから、当然みんな酔いが回ってきてよく騒いだ……と思う。
所々記憶が曖昧だ。
おっちゃんが帰った後は、ロイの独壇場になるかと思いきや途中からウィルも加わり二人で意気投合していた。
ウィルも酔いが進むと饒舌になるとは……。
その後は、確かロイはアリィと、俺はシャーリーと飲んでいてウィルとルルとソニンが一緒に飲んでいた。
まぁでも、ルルは最初戸惑っていたけど、俺たちが騒ぎ出して途中から慣れてきたのか、最後には笑っていたしちょっとは慣れてくれたのかもしれない。
昨日の飲み会はやった意味があっただろう。
「ったく、メチャクチャ飲むからだ! 少しは自重しろ!」
「くっ、ハルに注意される日が来るとは……」
いやいや、お酒が入ったロイにはツッコミどころたくさんありますけど。
ただ言ってないだけで。
「ん? ウィルどうした?」
ふと、ウィルを見るとウィルが頭を抱えている。
「ウィル、まだ頭痛いのか?」
俺はウィルに声をかけるが返答はない。
おかしいな。
宿屋全体に解毒魔法かけたから効いてるはずなんだけど。
「ウィーー」
「俺は昨日何をしてた? まさか、ゴルゾーラ教の刺客が……」
俺がウィルに近づくとウィルが呟いていた。
あぁ、ウィルも酔い過ぎて記憶が飛んでいるのか。
まぁ昨日は最後の方はキャラが変わったように饒舌になってロイと意気投合してたからな。
「ウィル……大丈夫だ。それはお酒の飲み過ぎだ」
俺は真剣に悩むウィルに真相を教えた。
「何!? お酒を飲み過ぎるとこうなるのか……。気をつけないと。ハル、俺は昨日大丈夫だったか?」
大丈夫だったか……俺が知ってる限りでは変な事言ってないしただキャラが変わって饒舌になってたけど、それは別に大丈夫な部類に入るだろう。
ウィルがルルとソニンといた時は分からないけど。
「たぶん……俺が知ってる限りでは」
「そうか……」
ゴメンな、ウィル。
それ以上は俺もなんとも言えない。
とは言え、俺たちもっとお酒を自重しないとな。
酔ってる時にゴルゾーラ教に襲撃されたらたまらない。
最悪俺だけでもしっかりしていざという時は解毒魔法かけられるようにしないと。
はぁ〜やっぱ酒の席では俺は保護者か。
俺はダンノームの街で迎えた最初の朝に自分の役割を再認識した。




