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第二百九話 ダンノームでの出来事 その4

 声がした方へ振り抜くとそこには茶色を明るくした髪の男がいた。

 男というか男の子と言うべきか……俺たちと同じくらいの年だとは思う。

 服装は上が白のシャツで下が黒のハーフパンツ、そして額にはタオルをまいている。

 そして、服は汚れているので 見た目若そうだけど、働いているような感じだ。

 それにしてもこいつも光の精霊の加護を受けているのだろうか?

 おっちゃんの髪の色と比べても明るいし。


 「ししょーー」

 「誰が『いた』だ!」


 ドアから入ってきた男は、おっちゃんに駆け寄り声をかけようとしたところでおっちゃんにげんこつされた。

 あれは痛そうだ。


 「イテテテ、でも師匠がいつもこっそり一人で飲みに行っては酔っ払うから探したんじゃないっすか」


 男は頭を両手で押さえながらおっちゃんに言う。

 でも、師匠?

 って事はこのおっちゃんは鍛冶屋かなんかかな?

 ここはサラージ王国も近いからか鍛冶屋も多いし。

 さっきアドルノ工房の話をした時にちょっと嫌そうだったのはアドルノ工房に客を取られているからかもしれないな。

 悪い事したな、気をつけないと。


 「何言ってんだ!? 俺はいつも酔っても迷惑はかけてないだろ!?」

 「師匠……いつもそうやって違うテーブルに乱入してるじゃないっすか」

 「そ、それは……な、なぁおまえたち、迷惑じゃないよな?」


 おっちゃんは動揺しながら俺たちに助けを求めてきた。

 確かに迷惑じゃないしさっき気を悪くさせたから助けてあげよう。


 「俺たちは大丈夫です。迷惑じゃないですよ?」

 「そうっすか……それは良かったっす。でも、師匠明日も早いんでそろそろ帰りましょう」


 男はそう言うとおっちゃんに寄って腕を引いた。

 なんか師匠と言うよりは親子みたいだな。


 「分かった、分かったから待て、ラート!」


 おっちゃんは男に向かって言う。

 この男はラートって言うのか。


 「ったく、おまえさん達水差して悪いな。代わりといっちゃーなんだが今日は俺のツケで飲んでくれ」

 「いや、それは悪いですよ!」

 「いいんだいいんだ! 俺も久しぶりに熱い話で楽しい酒が飲めた」


 ウィルの批評とロイの絡み酒で楽しく飲めるのだろうか?

 それでいいならいつでも代わってあげるけど。


 「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 「おう! じゃあ続き楽しく飲んでくれ!」


 おっちゃんはそう言うと帰り際に『おまえさん達ならアドルノ工房で武器を作ってもらえるさ』と言いラートと言う男は『師匠が迷惑かけたっす』って言って帰って行った。

 

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