第二百八話 ダンノームでの出来事 その3
「そうだな。完璧に分かるかと言えば分かってないと思うが、本質はみようとしている」
突然の話しかけてきたおっちゃんにウィルは言葉を返す。
しかも、どっかの批評家のコメントのような言葉で。
「はは! にいちゃん若いのに大したもんだ!」
知らないおっちゃんは豪快に笑いながらエールの入ったジョッキを持って俺たちの席に乱入してきた。
おっちゃんは近くでみると腕も太く逞しく身体つきだ。
見た目も日焼けしていていかついし、髪も茶色で何かを全体的に色が濃く迫力がある。
「にいちゃん達はこの街に何しにきたんだ?」
おっちゃんはエールを空け、もう一杯注文しながら俺たちに問いかけてきた。
そう言えばコルト都市国家でもこうやって店でお酒飲んでたらダリウスさんに声かけられたんだっけ。
ダリウスさんは元気にしてるかな?
メリーさんとはうまくいったんだろうか?
「実は俺たちアドルノ工房で武器を作ってもらうと思ったんですが、取り合ってもらえなくて」
俺はコルトでの事を思い出しながら隠す事でもないと正直におっちゃんに話す。
「アドルノ工房か……あそこは人気だからな。にいちゃん達も一流の武器目当てか?」
おっちゃんはさっきよりやや声のトーンを落として問いかけてきた。
何か気に触る事でも言っただろうか?
「それはーー」
「一流の武器が目的って訳じゃない。やらなければならない事を為すために武器が必要なんだ!」
俺が話そうとしたところで、どこからかロイが現れて話に入ってきた。
さっきまでアリィと一緒に飲んでいて今にもイチャつき始めるんじゃないかと思うような雰囲気だったのに。
ロイの奴、酔っ払って語るくせが出てきたな。
「ほぅ。聞かせてもらっても?」
「あぁ、その訳はーー」
俺たちはその後しばらくロイの話を聞く事をになった。
今まであった事、ゴルゾーラ教の事、自分がカルザルに負けた事、それでもやらなければならない事がある事、ラース教皇国での事……。
みんな慣れたのかロイの語りを聞いてたけど、ルルは普段あまりここまで喋らないロイに若干驚いている様子だった。
ちなみにアリィはうっとりした顔でロイの話を聞いていた。
「だから、俺たちには武器が必要なんだ!」
そう言ってロイは熱く語り終えた。
……おっちゃん引いてないだろうか?
「そうか……」
おっちゃんは黙って頷いている。
「あっ、いた!!」
すると、店の入り口から叫び声が聞こえた。




