第二百七話 ダンノームでの出来事 その2
「だから俺はな……おいハル、聞いてるか?」
「その話何度も聞いてるよ!」
案の定、飲み進めて行くうちにロイが酔っ払い始めた。
いつもより酔いが早いのはやはり身体の水分が少ないところにお酒を飲んだからだろう。
それにしても相変わらずロイは酒癖が悪い。
「ハル君、待ってたんだよぉ?」
俺はロイの隣にアリィを招き、アリィのいた席、つまりシャーリーの隣にきた。
シャーリーも酔っているのか上目遣いで覗き込むようにして甘え口調で声をかけてきた。
シャーリーは果実酒を飲んでいたけど、果実酒はエールよりアルコール分が高いから飲む量がそれほど多くなくても酔いやすい。
酔っているシャーリーは可愛いけど、その分俺が衝動を抑えるのに必死だ。
これは魔力操作よりも難しい。
「シャーリー……」
「なにぃ〜?」
俺の視線がシャーリーの唇へ向く。
あぁ、俺も酔っているのかな。
最近いろいろあったしたまにはいい事があっても……ってダメだダメだ!
しっかりしろハル!
「な、なんでもないよ! シャーリーが可愛いから名前呼んだだけ!」
俺は首を振って雑念を飛ばしてからシャーリーに答えた。
「な、なに言ってるのよぉ〜……でも、嬉しい……」
シャーリーはそう言うと顔を赤くして頰に両手を当てて俯いている。
……可愛い。
これが二人きりなら俺は狼に変身して……だからしっかりしろハル!
「ハルも大変だな」
俺がまた顔を左右に振って雑念を飛ばしていると、ウィルが声をかけてきた。
ウィルはルルとソニンが話している横で大人しくエールを飲んでいる。
飲んでいるというより味わっているな。
前もエールについて麦の批評してたくらいだし。
大人しくエールを飲んでいる横でソニンとルルが話しているのを見ると、ウィルは保護者に見えるな。
「ウィルもな」
「ん? 何がだ?」
しまった!
つい保護者だと思って声をかけてしまった。
俺も酔っているのかな。
「い、いや、なんでもない! それよりエールうまいな!」
俺は誤魔化す為に話を変えた。
「ん? あぁ、そうだな。冷えたエールもうまいがこれくらいのエールはエールで香りが引き立つ。それにここのエールはまた麦が違うみたいだしな」
案の定ウィルはエールの話に食いついてきた。
「おっ! にいちゃん達はここのエールの良さが分かるのか?」
突然知らないおっちゃんが声をかけてきた。




