第二百六話 ダンノームでの出来事 その1
「「「かんぱーい!!」」」
俺たちはダンノームの酒場に来ている。
なぜだ……なぜ……もちろんこんなはずじゃなかった。
本来であればアドルノ工房で交渉中とかお願いしたおしているとか要望を伝えたりしてるははずだった。
でも、アドルノ工房を門前払いにされたのだから仕方ない。
職人がいる工房への入り口はなく、アドルノ工房が商品を売っている店の入り口しかなかったので店員さんに言って取り次いでもらおうとしたら却下された。
とりあえず明日に面会したいと言付けはしたけど期待はするなと言われてしまった。
「はぁ〜……」
「おいハル、仕方ないだろ?」
「わかってるけど……ロイは割り切り過ぎだろ! もうエール一杯空けたのか!?」
「こうも暑いとな。まぁ冷えたエールが欲しいところだけど無理は言えないしな」
ダンノームもサラージ王国程でないにしろ、水は貴重なもので制限はないにしてもみな節水して生活している。
そして、暑い気候という事で氷は運んで来られない。
その為、建物にレンガ造りの地下室を作り日光の届かない暗い場所で冷やすというか少し低い温度で保存しているみたいだ。
「まぁ常温のエールはエールで香りがたつからいいけどな」
「あぁそうかよ!」
ったく、ロイはお酒飲めたら何でもいいんじゃないのか?
「でも、さすがアドルノ工房だな」
と思ったら唐突に真面目な話をしだしてきた。
ころころ話変えやがって……もう酔ってるんじゃないだろうな?
「そうだな。確かに業物が並んでいた」
「ウィルもそう思うか?」
確かにアドルノ工房で売ってた武器は凄かった。
同じ鉄の剣でも一般的に売っているのとは違いオーラがある。
「あぁ、一度職人に会ってみたいものだ」
いや、会えないと困るんだけど。
「まぁ固い話はそれくらいにして、今日はルルの歓迎会も兼ねているんだから飲むぞ!」
「えっ? そんなの悪いですよ」
「ルルちゃん遠慮しなくていいのよ? 私たち仲間なんだから」
「うん、そだよ!」
「ルルは私より年下だからね! お姉さんに遠慮しない!」
「そうだぞ! 今日はハルの奢りだからな!」
「おいロイ! 何を勝手に!!」
ったく、ロイの奴酔い始めたか。
ころころと話を変えて。
それになんか勝手に俺の奢りになってるし。
汗で身体の水分が減ってる時に飲んだから回りが早いのかもしれない。
まぁでも、確かにルルとみんなが親睦を深めるのにありかもしれないな。
「まぁいいか。俺の奢りだ! 飲むぞ!」
俺は勢いに任せて言葉を放った。




