二百二話 ルード街道を進みます
「なぁ、サラージ王国ってどんな国なんだ?」
俺はサラージ王国へ続くルード街道を進みながら、ロイに問いかける。
「ん? 俺も実際に行った事はないから聞いた話になるけど……サラージ王国はアースハイト王国と一緒の王政だ。基本的にしくみはアースハイトと変わらないと思うけど環境が特殊らしい」
環境が特殊?
どういう事だ?
「サラージ王国は周りが砂地に囲まれていて木や水といった資源が少ないらしい」
「えっ? それって生活できるのか?」
木はともかく、水がないと生活ってできないと思うんだけど……。
「あぁ、サラージ王国は木と水の資源が少ない代わりに鉄等の鉱石がたくさん採掘されている。それをそのまま鉱石したり加工して輸出して得たお金で他国から水や食糧を調達するみたいだ。だからサラージ王国は鍛冶屋などが発展してるんだ」
なるほど、生活の為に技術が向上してそれが特産みたいな感じになっているのか。
「もっとも今から行くアノルド工房はサラージ王国一の鍛冶職人と言われた人物だ」
「確かにそれは凄そうな人物だ。でも、なんで王都に住んでないんだ?」
普通はそんな凄い人なら王都に鍛冶屋を構えていそうだけど。
「それはな……その職人は頑固というかなんというかサラージ国王が止めるの押し切って鍛冶のしやすい環境を求めて国を出たらしい」
「そ、そうなのか? でも、環境って?」
「鍛冶には水が必要だろ? だから水が貴重な王都は鍛冶には向いてないという事だ」
「確かに……でも、そんな凄い人なら国から支援があるんじゃないのか?」
「あぁ、最初は国も支援を申し出たらしいけど、『俺は作りたい時に作る! 支援とか言われると作れと言われている気がして嫌だ!』と言ったらしい。まぁもっとも生まれた国を捨てるのは嫌だったのかサラージ王国とラース教皇国の中継にあたる街に工房を構えたみたいだけどな」
「ハハハ……」
なんか頑固そうな人っぽいな。
一筋縄じゃいかないかも。
「……俺たち大丈夫かな?」
「……わからん」
……不安になってきた。
最悪、違うところも視野に……いや、でもなんとか頼むしかないか。
生半可ではいかない相手だし。
「まぁ最初が肝心だな」
「そうだな」
俺とロイは揃ってある人物を見る。
「ん? なんだ?」
「な、なんでもないよ、ウィル」
俺は不安を抱きつつ先へ進んだ。




