第百九十八話 ラース教皇国での出来事 その61
ゴルゾーラ教がサラージ王国にいるのなら向かわなければならない。
ゴルゾーラ教がサラージ王国で何をしているか分からないけど、イストニア帝国にいた時には皇帝を操り戦争へ仕向けた。
今サラージ王国で国をあげてゴルゾーラ教を布教しているのなら、イストニア帝国と同じような道を辿るかもしれない。
だから、俺たちも向かわなければならない。
「私も一緒に行きます!」
急に扉が開き声が響き渡る。
誰だと思って振り返るとそこにはウィルとルルとアンジェさんの三人がいた。
もしかして……?
「巫女よ! 何を言っている!?」
明らかに大司教は狼狽しながら言葉を返す。
やっぱりルルだったか!
ウィルは分かってたと言わんばかりにいつもの表情だし、アンジェさんは困惑しながらも諦め顔だ。
もしかすると、ここに戻ってくるまでにそういう話をしていたのかもしれない。
「私は自分の命を諦めていました。どうする事もできない。そういう運命なんだと……。しかし、そんな私を皆さんは助けてくださいました!」
そう言ってルルは俺たちを見回す。
確かに最初ルルは自分が死ぬ事を受け入れていた。
そんなルルを助けようと言ったのはウィルだったな。
「私の命は皆さんあってのもの。だから、私はみんなの為に生きなければなりません」
「し、しかし……」
「私を助ける為に結果として失われた命……私は失われるはずのない命が奪われようとするならそれを阻止する為に出来る事をやらなければなりません! しかし、私に戦う力がないのは事実。それを受け入れてもらえるかどうかもありますが……」
ルルはそう言って俺の方へ視線を送ってきた。
確かにルルは戦う力はない。
でも光の精霊の加護を受け、神聖魔法も使えるし闇の精霊が敵にいる以上、光の精霊の加護を受けているルルは助けになるかもしれない。
それにここにいてもルルが守られる保証がないのも事実。
ラース教皇国の総本山とは言え、あのゴード=ザイールと言ったゴルゾーラ教のトップや幹部が来れば厳しいだろう。
「ハル、ルルは俺が守る。だから一緒に連れて行ってくれ」




