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第百九十四話 ラース教皇国での出来事 その57

 「おい、ハル」

 「ん?」


 ロイと二人でエイブラム司教の遺体へ向かう途中でロイが声をかけてきた。


 「大丈夫か? いろいろ考え込んでるように見えるけど……」


 どうやらロイは心配してくれているらしい。

 考え込んでいる……そう言われればそうだろう。

 なぜ関係のなかったメイファちゃんが死ななければならなかったのか、メイファちゃんを救う事は出来なかったのか、俺がやった事は間違ってなかったのか……考えても考えても答えはでない。

 『もし』って考えてもその後の展開が想像通り運ぶか分からないしそもそも逆にもっと最悪な結果になる事もある。

 考えても仕方ない事だけど……。

 でも、俺は考えずにはいられなかった。


 「あぁ、まぁちょっと……な。でも大丈夫だ」


 俺は否定はせずに素直に答える。


 「そうか……」


 ロイはそれだけ言うと深くは聞いてこなかった。


 「ウィルの奴は凄いよな」


 そのかわりにロイはウィルの事を口に出した。


 「そうだな。あいつは俺が思ってたよりしっかりとした凄い奴だよ」


 本当にそう思う。

 ウィルはしっかりした奴だ。


 「なぁハル、あいつの前では言えないけどあいつは戦う力は俺たちよりも正直今は低いと思う。でも、あいつはそれを受け入れて(・・・・・)強くなろうとしている」

 「そうだな」

 「俺はこの前負けた時に最初その現実を受け入れられなかった(・・・・・・・・・)。自分にとって良くない事が起こった時にその現実を受け入れるのはなかなかすぐ出来ない事だ」


 確かにそうだと思う。

 村がドラゴンに襲撃されじぃちゃんとばぁちゃんが死んだ時、俺の過去を知った時もそうだ。

 すぐにはなかなか受け入れられなかった。


 「でも、ウィルは違う。どんな辛い事があってもちゃんと目の前の現実を受け入れ前に進んでいる。……本当に凄い奴だよ」


 そうだ。

 ウィルは力が俺たちに劣る事も、父を倒した時も、メイファちゃんが死んだ時もその目の前の現実を受け入れ前に進んでいる。


 「……本当にウィルは凄い奴だな」

 「俺たちも負けてられないな。これから先も何があるか分からない。でも、それを受け入れ前に進む強い気持ちを持たないとな」


 ロイの言う通りだ。

 これから先も何があるか分からない。

 それでも俺たちは前に進まないといけないし、後ろばっかりみて目の前の現実から目を逸らしていてはさらなる被害を生む事になる。


 「そうだな! ありがとうな、ロイ!」

 「礼を言われる程じゃない。まぁ借りは返したからな?」


 借り?

 あぁ、この前の事か。


 「それに最近ウィル奴が目立ってるからな。 そのうちウィルが仕切るようになるかもしれないからしっかりしないとな」


 ロイは口角を上げ、ニヤリとする。

 ロイは俺の気持ちを盛り上げようとしてくれてるのだろう。


 「そうだな! 俺たちしっかりしないとな!」

 「そうだ。調子に乗るくらいがハルなんだからな」

 「な、なに!?」

 「ほら、みんな待ってるからさっさと行くぞ!」

 「さっさとって……おい!」


 俺はメイファちゃんの死を受け入れ、前を向いて進む。

 これから先何があるか分からないけどこんな悲しい事が起こらないように……メイファちゃんもそう望んでくれていると思う。

 メイファちゃん……。

 俺は心の中で彼女に誓い、ロイを追った。

 

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