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第百九十三話 ラース教皇国での出来事 その56

 「そうか……そんな事が……」

 「そんな……メイファちゃん……」

 「まさか子供一人でこんなところに……」


 俺たちはフォルクレストを降り、様子を見てロイ達に合流した。

 様子を見るといっても、見た時には男達はロープで括られロイとアリィがアンジェさんと話しているところだった。

 ロープはアンジェさんを括っていたのと馬車にあったのを使ったらしい。

 ちなみに、アンジェさんを見張っていた男達は手練れでもなく、魔法宝具(マジックアイテム)もなかったようだ。

 そんなにいっぱいの魔法宝具(マジックアイテム)、しかもあれ程の性能となるとなかなか揃わないだろうし、それにアンジェさんと言えど武器を奪われ括られていたら抵抗も出来ないし見張りだけで良いという事だったのだろう。



 最初俺たちを見かけた時はロイとアリィは笑顔でこっちを見たけど、次の瞬間には表情が曇った。

 ウィルに抱かれているメイファちゃんを確認したのと俺たちの様子から察したのだろう。

 それで俺たちはアンジェさんも交えて祠であった事を説明した。


 「メイファちゃんが助けてくれました。メイファちゃんがいなければ私かウィル様が死んでいたと思います」


 確かにあの弾丸には仕掛けがあったし、あのまま弾丸がいけばウィルかルルを捉えていただろう。

 俺がもっと早くに気付いていれば……。


 「俺はこの事を孤児院の先生に説明しにいきたい。それは俺の役目だ」

 「ウィル様、私もーー」

 「いや、俺一人でーー」

 「いえ、私も行きます! でないと私はこの先生きている資格がありません」

 「……分かった」

 

 辛い役目を二人は自らやろうとしている。


 「ウィル、俺もーー」

 「ハルはエイブラムの方を頼む。俺は今エイブラムを見るとどうにかなりそうだ。……悪いが頼む」

 「……分かった」


 ウィルは俺に頭を下げ頼み込む。

 エイブラム司教見るのが嫌だと言うわりにはちゃんと遺体を気にしている。

 本当ウィルは凄い奴だ。

 

 「この様子をなら馬車使えそうだしエイブラム司教の遺体を運んで来るよ」


 さっきは馬車がどうなっているか分からないしこっちの状況が分からないからエイブラム司教の遺体はやむなく置いてきた。

 でも、この様子なら運べるだろう。


 「じゃあ俺もついて行こう。俺とハルの二人で行って来るからウィル達は待っててくれ。大丈夫だと思うけど一応警戒も頼む」

 「……すまない、ハル、ロイ」


 ウィルは俺とロイに再度頭を下げる。

 ウィル……おまえに頭を下げられる事なんてないよ。

 

 「じゃあ行ってくる」


 俺とロイはエイブラム司教の遺体へ向かった。

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