第百八十八話 ラース教皇国での出来事 その51
「ハル君!! メイファちゃんの顔色が良くならないの!!」
俺がメイファちゃんに駆け寄るとシャーリーはメイファちゃんに何度も治癒魔法をかけていた。
メイファちゃんは血こそ止まっていたものの、顔色は良くない。
「分かった!」
俺はシャーリーに代わってメイファちゃんの様子を見る。
回復魔法は俺が使うのと同等くらいのをシャーリーは使っていた。
だから治癒できるレベルのダメージは回復してるはずだ。
あと、考えられる理由は弾丸が体の内部の臓器に治癒出来ないレベルのダメージを与えた可能性ともう一つは……
「ハル様、私の神聖魔法も!!」
そう言ってルルはメイファちゃんの傍に両膝をつき両手を合わせて言葉を発する。
「世界に宿りし光の精霊よ。我、汝の導きによりこの命を捧げる。その誓いの代償に我に力を与えん。聖なる浄化!」
ルルが詠唱すると眩い光がメイファちゃんを包む。
ルルの詠唱内容から神聖魔法の上級、そしておそらく巫女にしか使えないレベルのものだ。
「うっ……」
メイファちゃんは呻き声を上げ少し顔色が良くなった。
「メイファちゃん!」
「メイファ!」
シャーリーとウィルが同時にメイファちゃんの名前を呼ぶ。
「わたし……」
「メイファしっかりしろ! どうしてこんな無茶を……なんでこんなところにいるんだ!!」
ウィルがメイファちゃんを抱き抱えながら問いかける。
シャーリーは空気を読んだのか一歩引いて二人を見守っている。
でも、何もしてない訳ではなく、俺と同様に回復魔法をかけ続けている。
それはルルも同じだ。
詠唱が終わっても魔力を流し続けている。
それでもメイファちゃんは完全には治癒しない。
「リン……ゴ……取りに……きたの……みんな……にお礼……しようと……思って。そした……ら、ウィ……ルお兄……ちゃんが、あぶ……なさそ……だった……から、ウィ……ルお兄……ちゃん、無事……で良かった」
メイファちゃんは祠の奥を指差して答える。
メイファちゃんが売っていたリンゴはフォルクレストにあったものなのか。
確かに美味しかったしここは空気もキレイで魔物も出ないし土もいいだろうし納得できる。
でも、こんなところまで一人で取りに来てたなんて……。
「メイファなんて無茶を……」
「だいじょ……ぶだよ、メイ……ファが、がんば……ってみんな……に、食べて……もらう……の、うっ!」
「メイファ!!!」
さっきまで少し良くなっていたメイファちゃんの顔色がまた悪くなり出した。




