第百八十四話 ラース教皇国での出来事 その47
黒装束の男達は四方へ飛びそのうち一人が上から針を投擲してくる。
俺はそれを横に飛びかわしたところへ一人が短剣を片手に突っ込んでくる。
そのスピードはなかなかのものだけど、俺にとっては問題ない。
まして、さっきと同じ手だ。
分かっていれば対処できる。
「同じ手をくらうか!」
俺は突っ込んできた男の短剣を今度は受ける事なくかわし、避けた際に魔力を漂わせた剣で斬りつける。
男は避けられるとは思わず、ましてカウンターまでくるとは思わなかったのかその瞬間にこちらを見て目を見開いた。
そして、声を発する事なく胴体が上下に分かれ落ちる。
人を殺めるのは嫌だけど……こうするしか他ない。
躊躇したらこちらが殺られる。
「ちくしょうぉぉぉ!!!」
今倒した男と仲が良かったのか、別の男が俺に突っ込んでくる。
その動きは単調でまっすぐ俺目掛けてくる。
俺はそいつを倒すべく待ち受ける。
「!?」
その時、三方向から俺に向かって針が投擲された。
まさか、全員で俺を狙ってくるとは……。
今の状況を見て咄嗟に行動を変更したのかそれとも最初から五人で俺を先に狙うつもりだったのか……。
どうする……?
「ハル君!」
シャーリーの声が聞こえたかと思うと水虎が針を迎撃する。
それでも、針全てを迎撃できた訳ではないけど次の瞬間には風が巻き起こり針共々、上空に飛んでいた三人を巻き上げる。
「う、うわぁ!!」
「こりゃなんだ!?」
「くそ!」
男達はダメージこそなさそうだけど、風圧には逆らえず吹き上げられてしまった。
その風はソニンが無詠唱で放ったものだろう。
「ハル! 油断するんじゃないわよ!」
はい、すいません。
俺は心で謝りながら突っ込んできた男をかわしざまに切り捨てる。
「えっ……」
男は感情的になっていた為、何も対応できずに短い声を残し倒れた。
そして、俺は上空を見上げ落ちてくる三人目掛けて足に魔力を集め跳ぶ。
「終わりだ!」
「くそ!」
「こんなはずじゃ」
自ら跳んだ俺と違い、ソニンの魔法で吹き上げられた三人は態勢を整える事も出来ず、そのまま俺の攻撃を受けその命を終えた。




