第百八十三話 ラース教皇国での出来事 その46
「!?」
俺は黒装束の男の突きを半身を反らして避ける。
でも、黒装束の男は思っていたよりも速いスピードできた為俺は驚いた。
速いと言っても一般的に見てだけど。
それでも、複数人いるのは少しやっかいだ。
「このスピードについてくるとはな」
「エイブラム司教様様だな! 今までの自分じゃ、ねぇみたいだ!」
「あぁ、この腕輪といい、この服といい効果はすごい」
くそ、どうやらあの黒装束も魔法宝具の類か。
スピードを上げて魔法が効きにくい、本当にやっかいだ。
しかも、魔物と違って人間相手だし。
ここで躊躇してはダメだけど……でもそれだけじゃなくて人間が相手だから向こうも知恵がある。
「とりあえず小僧だな」
「あぁ、嬢ちゃんたちは出来たら生け捕りにしたいしな」
「ひひひ」
「相手が悪かったな小僧!」
そう言うと男は俺に突っ込んでくる。
「そんな簡単にやられるか!」
俺は男をかわしながらカウンターを入れようと行動に移そうとした。
「!?」
その時、俺がいる場所へ視界の端から光る何かが飛んでくる。
俺はカウンターを諦めそれを避ける。
「針か」
俺がいた場所には針らしきものが地面に刺さっている。
きっとあれには毒か何かが塗ってあるのだろう。
『キン』
次の瞬間には金属音が響く。
それは俺が避けた先にまた男が突きを放ってきたからだ。
俺はそれを魔力操作した剣で受け止める。
「ちっ」
そして、男は舌打ちして俺から距離を取る。
俺はシャーリーとソニンの方を見たけど、二人とも背合わせにして特に怪我らしいものも無さそうだ。
おそらく俺をメインに狙っていたから二人に割く人数が少なかったんだろうと思うけど、それでも二人も戦う力がついているのだろう。
それにシャーリーは水虎を出現させている。
俺は男達が距離を取っている間に二人の元へ行き前に陣取った。
「この短剣も魔法宝具なんだがな」
「それもビックリだが、あいつ突きを剣で受け止めるとは……」
「確かに……やるようだな」
「男だけじゃねぇ。あの女二人も魔法を詠唱なしで使いやがる。それに妙な魔法もだ」
「そうだ。あの水で出来た虎みたいなのはやっかいだ」
「……気を引き締めないといけないな」
そう言うと男達は構え直した。
俺達三人もそれに合わせて体勢を整えて対峙した。




