第百八十二話 ラース教皇国での出来事 その45
黒装束の男は俺たちの周りを取り囲む。
俺は背をシャーリーとソニンと合わせ、二人に後方を任せている。
なかなか向こうも動かずやや膠着状態になっている。
ウィルとルルの方もまだ動きがない。
戦闘狼と対峙しているだけだ。
ウィルから動く事もできるだろうけど、狙いがルルな以上何があるか分からない為先に動かないで様子を見ているのだと思う。
となれば、俺たちが早く合流する方が良い。
ならば……。
「こっちは急いでいるんだ……よっ!」
俺は無詠唱で重力魔法と行動阻害の複合魔法を放つ。
これはイストニア帝国との戦争でも重宝した相手の動きを封じるには最良の魔法だ。
「何!?」
俺は驚きの声を上げる。
「何かしたか?」
「おい、もしかしたらなんかの魔法でもかけられたのか?」
「いや、でも詠唱してなかったぞ?」
「噂では最近無詠唱で魔法を使うやつがいると聞いた事が……」
「へっ、どうでもいいじゃねぇか! どっちにしても魔法は効かねぇんだから!」
「そうだ! さすがエイブラム司教様だ! 金があれば何も怖くないねぇ!」
「ははは! 魔法なんて怖くないな!」
男達が口々に言葉を発する。
俺の放った魔法は黒装束の男達にはきいていないようだ。
何故だ!?
「ふっ、世の中金があればなんでも手に入る。その者達には魔法を無効化する魔法宝具を渡してある。昨日おまえ達を見てまさかと思って警戒した甲斐があった。かなりの金額の物だが……まぁもっともその魔法宝具だけの性能ではないがな。さすがあのお方と言ったところか」
魔法宝具とは言え、魔法を完全に無効化するなんて代物はエターナルログの知識でも数少ない。
まして、重力魔法は特殊な魔法だけに四大属性無効化と違いより貴重になる。
まさか……
「……あのお方ってのはゴルゾーラ教か?」
「そうだ。ラース教と違い、知識も力もある。そしてそれがあれば金も入る。それにあのお方は死者をも蘇させられると言っていた。時期に私の妻も蘇らせてくれると……あのお方こそ神だ!」
ゴルゾーラ教がここまで手を貸しているとは……重力魔法は一部闇属性が入るからもしかしたらそこでなんらかの付与を付けたのかもしれない。
あのゴード=ザイールなら出来る可能性がある。
だとしたら、あいつらは闇の精霊の力を得ているから闇属性に特に強いから重力魔法をも無効化する付与が出来たかもしれないけど、他の属性や無属性の魔力操作なら効果があるかもしれない。
「死んだ人間は生き返らない! そんなのまやかしだ!」
「だまれ! 力無き者がほざくな! 行け! あいつを殺せ!」
エイブラム司教の言葉に反応し黒装束の男達が襲ってきた。




