第百七十三話 ラース教皇国での出来事 その36
「それじゃあしゅっぱ〜つ!」
アリィの掛け声で俺たちはラース教皇国を出発する。
なぜかアリィが言うと護衛のはずなのに遠足気分になってしまう。
……危ない危ない。
気を引き締めないと。
今日は誰も寝坊する事なく朝早く起きれた。
『今日は』というか前回も俺は寝坊した訳じゃないから『今日も』って言うのが正しいけど。
今はまだ陽も昇っていなくて薄暗い。
でも、ルル達が朝出発すると言う事は俺たちはそれより早く行かないといけない。
それに堂々とは行けないので馬車で行く訳にはいかないし早く出ないと行けない。
霊峰フォルクレストに着いた時に馬車を止めて置いたらバレてしまうからだ。
まぁバレても良いけど変に疑われたり儀式に支障が出るのはいけない。
だから、俺たちは歩いていく事にしたのだ。
歩いていくと行ってもそれ程遠い訳でもなく、歩いて一時間程度といったくらいだろうか。
「さて、今日は何が出るかな?」
「どうだろな? ゴルゾーラ教が出てくれるかそれとも案外大した事ないのか」
「ふん、何がきても倒せばいい。ただそれだけの事だ」
確かにウィルの言う通りだけど、ここ最近は簡単に倒せる程の敵ではない奴が多いし、しかも戦闘になったら自分の身だけじゃなくて守りながらの戦いになるし気は抜けない。
「そう言えばルルちゃんは今日フォルクレストの麓から一人で祠に向かうのよね? ルルちゃんの命を狙う人は待ち伏せしてるのかしら?」
「ん? あぁ、そうかもしれないな。そうだったとしたら俺たちが先に倒せばいいのだろうけど明らかに怪しい奴じゃないと実は隠れている巫女様の護衛でしたって事もあり得るし」
確かにアリィの言う通り待ち伏せの可能性もあるしロイの言う通りこっそり護衛って可能性もなくはない。
「分からん事言ってても仕方ない。早く行って先に辺りを調べるぞ」
ウィルが二人の会話に入る。
ウィルの言う通りだな。
分からない以上先に行って調べるしかない。
それにしてもカルザルとの一件以来ウィルは頼もしくなった。
俺の影が薄くなった気がする……。
「それもそうだな。急ぐか」
ロイもウィルの言葉に同意した。
一瞬心をロイに読まれて俺の影が薄くなったと言われたのかと思ったけどそうじゃなかった。
俺たち少し足を早めフォルクレストへ向かった。




