第百六十二話 ラース教皇国での出来事 その25
「どうぞ」
ノックにロイが返答する。
俺は弁解の為に喋り出そうとして一瞬戸惑ってしまってた。
「失礼致します」
ドアが開きアンジェさんが入って後に続き白いローブに包まれた少女が部屋に入ってきた。
「ラース教の巫女になる予定のルルと申します。本日は忙しい中お呼びし申し訳ありません」
そう言ってルルと名乗る巫女は頭を下げる。
なんて礼儀正しい子なんだろう。
でも……
『やっぱりどっかで見た事ある』
ルルと名乗る少女が部屋に入ってきた時にまず思ったのがそれだった。
クリフ君の誕生日でパンを配っていた少女に似てるって言ってたけど、そんなに関わってなかったし顔自体をハッキリ覚えてる訳でもない。
雰囲気、印象は似てるけど決め手にはならない。
「いえいえ、こちらは巫女様にお会いできると聞いて嬉しく思っておりました」
ロイがルルと名乗る巫女に言葉を返す。
俺はふとアリィを見る。
……ちゃんと社交辞令と分かっているようだ。
「そう言って頂くと助かります。少しお話したいのですがよろしいでしょうか?」
「はい!」
俺がすかさず返事をするとルルと名乗る巫女は一瞬ビックリしたような表情を見せた。
しまった、勢いよく返事し過ぎてしまったか。
ロイに任せておけば良かった。
「あ、ありがとうございます。では、アンジェ……一旦部屋を出て頂けます?」
「なっ!? 巫女様それはーー!?」
「この方達は大丈夫です」
「し、しかし……」
「アンジェ」
「はい……分かりました」
そう言ってアンジェさんは渋々部屋から出て行った。




