第百六十一話 ラース教皇国での出来事 その24
「なぁロイ、わざわざ専属護衛が呼びに来るってなんだろうな?」
俺はアンジェが部屋を出てからロイに小声で話す。
扉の前にアンジェが見張っている気配がするからだ。
「さぁな。でも、なんとなくラース教皇国が公に歓迎してって感じではなさそうだな」
俺の問いにロイも小声で返す。
実際、巫女から呼ばれたとは聞いたけど、教皇から呼ばれたとは聞かないし。
「まぁどちらにしても巫女が来るのを待つしかないのではないか? 来てから聞けばいいだろう」
ウィルが話に入ってくる。
確かに俺たちがここでああだこうだ考えても答えは出ない。
でも、ウィルってこういう時合理的な考えするよな。
「まぁそうだな」
ウィルの言う事がすべてであり、今出来る事は何もない。
なら考え過ぎても仕方ないか。
巫女様とやらに聞くしか分からないし。
「あっ、このクッキー美味しい!」
「本当だ! 果物の香りがいい感じ!」
「うん! 何の果物だろうね?」
目の前では女性三人がアンジェの部下が持って来て置いて行ったクッキーを食べて盛り上がっている。
こういう物を目の前にすると女性って盛り上がって子供みたいな表情を浮かべるよな。
男が子供みたいな表情を浮かべる時ってどんな時があるだろう?
……ウィルなら戦闘だな。
あいつ戦うの好きだしな。
ロイは悪だくみをしている時だし俺は……ない。
大人になって子供心をなくしたかな?
そんな事思ってたらみんなにつっこまれるかもしれないけど、自分では思いつかない。
「ハルはお金じゃないか? お金の話をしてる時は輝いてたぞ?」
不意にロイが口を開く。
また心を読まれたか!?
それにしてもお金ってなんだ!?
「違うわ! あれはみんなの感覚が違い過ぎたから必死に教えてただけだ!」
そんな言われ方したらたまったもんじゃない。
まるで俺が金の亡者みたいじゃないか。
ここは絶対に否定しておかなければならない。
『コンコン』
俺がさらに否定の声を上げようとしたところでドアがノックされた。




