第百六十話 ラース教皇国での出来事 その23
案内された部屋に入ると、今まで歩いてきた通路と同じように一面白い壁に木の机と木の椅子が並べられている。
やっぱり質素な感じだ。
「申し遅れました。私、巫女様の専属護衛隊長のアンジェと申します」
部屋に入ってドアを閉めると案内役の衛兵がいきなり名乗り出した。
俺を含め、みんな呆気に取られている。
「専属護衛?」
俺はそのアンジェと名乗る護衛に聞き返す。
「はい、巫女様をお守りし、身の回りのお世話をさせて頂いてます。昨日に今日の約束を取り付けたのも私の部下です」
なるほど。
身の回りのお世話をするなら女性じゃないといけないだろうし、巫女は清らかでないといけないとしたら護衛とは言え近くに男を置くのはよくないだろうしな。
女性の衛兵って珍しいと思ってたけど、衛兵じゃなくて巫女様の護衛なら納得できる。
「それで専属護衛がなんで?」
すかさずロイがアンジェさんに問う。
そうだ。
普通に国を通してじゃなくて専属護衛を通して俺たちに接触してくる意味が分からない。
「それは……巫女様の口から直接お聞きください。私が口にする事ではございません」
うーん、見事にはぐらかされてしまった。
まぁ、でもそりゃそうか。
自分の主の代わりにベラベラ喋るような専属護衛ってのはないだろうし。
「分かりました。じゃあ待たせて頂きます」
「……ありがとうございます。巫女様は時期に戻られると思いますのでそれまでの間ごゆっくりお過ごしください」
ロイの代わりに俺は答え巫女様を待つ事にした。
おそらく、それ以外の方法はないだろうし様子を見る限りみんなも異論ないようだ。
とりあえず俺たち椅子に腰掛ける事にした。




