第百五十八話 ラース教皇国での出来事 その21
「……そうだが?」
ロイは一瞬の間の後、言葉を返す。
『ロディーン様』と言われて一瞬人違いかと思ったけど、ロイの名前はそうだったな。
すっかり忘れていた。
もしかしてロイの一瞬の間は誰の事か分からなかったのだろうか。
それとも、急に呼ばれた事に警戒したのか。
……後者である事を願いたい。
「いきなりの失礼申し訳ありません! 私は巫女様の命によりあなた方を呼びにまいりました!」
衛兵は姿勢を正してそう言うと右手を額に当てた。
でも……
「なんで俺たちって分かったんだ」
俺は疑問を口にする。
これだけ人の多い中でどうやって分かったのだろう?
「はっ! それは光の精霊の加護を受けておられるので髪の色が違うし分かりやすかったのと……あの、その、えーっと……」
衛兵は途中から困ったような顔をして言葉を濁す。
……きっと俺の黒髪だな。
おそらく見た事もないだろうし。
まぁ最近はみんなに奇異の目で見られるのもドラゴンキラーとして注目を浴びたのも慣れてしまったのもあるし普通に思うようになってたからな。
それに何も声をかけたりしてくる訳でもないし。
まぁでも、確かに俺を筆頭にロイ、ウィル、シャーリーと四人も目立つ髪色があったら分かるか。
「あっ、分かりました。それで、どうすればいいのですか?」
「はっ! 自分について来てください!」
そう言うと衛兵は歩き出した。
「じゃあ俺たちも続くか」
「そうだな」
俺の問いにロイは返答し、みんなは頷く。
それにしても女性の衛兵って珍しいな。
そんな事を思いながら俺たちは衛兵について歩き出した。




