第百五十二話 ラース教皇国での出来事 その15
「じゃぁウィルお兄ちゃんからみんなにプレゼントだよ!」
「「「わーい!!」」」
「おいハル、俺からだけじゃないだろ」
「いいからいいから」
問い詰めてくるウィルを俺は押さえ、アリィとシャーリー、ソニンがプレゼントを配る。
クリフ君の誕生日だからクリフ君だけって訳にはいかない。
だって、みんな誕生日プレゼントってあんまりもらってないかもしれないし。
「わぁ! 可愛いぬいぐるみ! 私ずっと一緒に寝る!」
「うわぁ! コマだコマ! すげぇ!」
「剣かっこいい! 勇者ごっこしよう!」
子供達は口々に歓声をあげ、喜んでくれているようだ。
そして、今日の主役のクリフ君はというと……木の剣を選んだみたいだ。
残念。
「ウィルお兄ちゃん、剣術教えて! さっきの話のウィルお兄ちゃんみたいに強くなりたいんだ! 僕もみんなを守れるように!」
どうやらウィルは子供達に自分の話をしていたみたいだ。
ウィルが師匠か……今まではあんまり想像できなかったけど今なら良き師匠の姿が想像できるな。
「いや、俺より強い奴がここにいるぞ?」
そう言ってウィルは俺を指差す。
「僕はウィルお兄ちゃんに教わりたい!」
そう言って、クリフ君はウィルを真っ直ぐにみつめる。
なんだろう……この切ない気持ち。
俺は何も言ってないのに間接的にダメージを与えられた。
「そうか。なら今から教えてやる」
「ほんとぉ!? やったぁ!!」
クリフ君は飛びながら喜び、ウィルについて人が少ない方へ向かって行った。




