第百四十六話 ラース教皇国での出来事 その9
「ねぇハル君、何買って行こうか?」
今日はメイファちゃんとの約束の日だ。
あれからゴルゴーラ教について情報収集したけど、とりあえずザイール王国が怪しいって事くらいしか分からなかった。
と言っても街中で聞いてるだけだからラース教の本部で聞けばもっと詳しく分かるかもしれないと思ったけど、巫女誕生の儀式の準備の為、忙しいみたいでとりあってもらえなかった。
気がすすまなかったけどロイやウィルの立場を利用し、取り合ってもらおうとしたけど政治と宗教は別だと言う感じで無理だった。
そうしているうちにメイファちゃんとの約束の日になったのだ。
今日は朝から二人一組でメイファちゃん達へのプレゼントを買いに回っている。
この前誤解を与えたからとロイがこういう風に話を持って行った。
簡単に言うとちゃんと分かってもらうと言うのとご機嫌取りだ。
ウィルもソニンもその辺は分かってくれたみたいでソニンに至っては『ハル、貸しだからね』とまで言われた。
なんでそんな事言われなければならないのか……。
でも、なんだかんだシャーリーと二人で出かける機会が出来て良かった。
最近あまり喋ったりも出来なかったし。
「んー、ぬいぐるみとか木の剣とかかな?」
「ぬいぐるみは分かるけど、男の子って木の剣とかで遊ぶの?」
……正直分からない。
俺は小さい時から一人で魔法の訓練ばっかしてたからな。
ロイと会ってからも訓練だし……。
でも、コルト都市国家の街を歩いてる時に木の剣を持った男の子が『冒険者ごっこしようぜ』とか言ってたしたぶん大丈夫だと思うけど……。
「よし、店で聞いてみよう!」
「ふふ、ハル君面白い」
しまった!
久しぶりにシャーリーと二人きりだから変なテンションになってしまった。
「しょ、しょうがないだろ? だって俺小さい時一人で訓練ばっかしてたし」
「……ごめんなさい」
シャーリーは悪い事をしてしまったと落ち込んでしまった。
いや、そういうつもりじゃ……。
「違う違う! そういうつもりじゃなくて……。ほ、ほら! 将来生まれてくる子供の為にも知っとかないといけないし良かった!」
「へぇっ!? 子供も……!?」
しまった!
慌ててテンパって訳のわからない事言ってしまった!!
将来生まれてくる子供ってなんだ!?
俺の思考はどこまで先走ってる!?
前のロイとのやりとりの影響が残ってるのか!?
何が『良かった』だ! 何も良くない!
俺は自分の言った事に心の中でツッコミながら頭を働かせる……なんとか……なんとか……。
「あ、いや、その〜……そういう訳じゃなくて……いや、そういう訳じゃないと言ったらダメなのか? えっ? んー……とりあえずこれからもシャーリーと
一緒に過ごしていろいろ知りたいなって思って!」
あ〜……ダメだ。
自分で何言ってるか分からない。
「ぅ、ぅん」
シャーリーは顔を真っ赤にして俯いている。
……もうダメだ!
「よし、シャーリー! 何か食べよう!」
そう言って俺はシャーリーの手を取り歩き出す。
あ〜……今日はダメだ。
そう思った時、シャーリーが手を二回強く握り返してくれた。
すかさず俺も二回握り返す。
そして、シャーリーの方を向くと赤い顔で微笑みかけてくれた。
その顔を見て俺も微笑み返す。
良かった、良く分からないけどなんとかなったみたいだ。
でも、本当この顔を見るだけでやっぱり癒されるな。
……必ず守ってみせる。
そうして俺とシャーリーは仲良く買い物に戻った。




