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第百四十四話 ラース教皇国での出来事 その7

 「遅い目覚めだな、ハル」


 目が覚めて起きるといきなりロイに声をかけられた。

 遅い目覚めと言われても……まだ太陽が昇り始めているくらいだしむしろ早い方じゃないだろうか。

 まぁウィルも起きてるみたいだし、三人の中では俺が一番遅いけど。

 

 「遅いって……太陽はまだ昇り始めだから早い方だろ!」

 「そうか? まぁそんな事はどうでもいい」


 そんな事はどうでもいいって……。

 ロイが言ってる事の間違いを正そうとしただけで、俺が話を作った訳じゃないのに。

 まぁ、それにしてもロイはなんか吹っ切れたみたいだな。

 俺の励ましが効いたのかそれともその後にロイの元に向かったアリィか……よし、いっちょからかってやるか。


 「いやいや、俺からした話じゃないのにどうでもいいってひどい奴だな! それにしても上機嫌じゃないか? アリィとなんかあったか?」


 俺はジト目でロイの様子を伺う。


 「なんかあったかと言われたらあったけど、なかったと言ったらないな」


 ん? なんだ?

 この余裕そうな反応は?

 まさか……!?


 「お、おい! まさか!?」

 「ある訳ないだろ。落ち込んだ状況でそんな事して気を紛らわす程、俺は落ち潰れてない」

 「そ、そうか。そうだよな」


 良かった。

 そんな事になってたあかつきにはどう反応していいか分からないし気まずい。

 もし、そうなっていたらきっと俺とシャーリーにもなんらかの影響があるだろう。

 おそらくソニンあたりから……。

 それにしても、ロイは俺の心を読んでくれて助かる。

 でも、毎回読まれている訳にはいかないんだけどな。

 本当に不思議だ……全くどうかしてるぜ。


 「おまえの頭の中はそんな事でいっぱいなのか? せっかく昨日少しは見直したのにな。残念だ」


 おいおい!

 ちょっとからかおうとしたらロイが意味深な事を言いやがったからだ!

 くそ!


 「違うわ! 俺はーー」

 「いい訳はいいから行くぞ! きっと女性三人も朝食を待っている」


 そう言うとロイは俺に背を向け宿屋の1階にある食堂へ向かうと部屋の出口へ向かって歩き出した。

 なんだって言うだ!

 だいたいまだ朝早いんだから女性三人が来ているか分からないだろ!

 くそ! 朝から逆にやられ放題だ!

 ……まぁロイが元気になったのはいいけど。

 ふとウィルの方を見ると横目で俺を見ている。

 そして、口元の口角を上げてニヤリとして俺に目で『行くぞ』と訴えかけてくる。


 はいはい、分かりましたよ。

 行けばいいんでしょ、行けば。


 それにしてもウィルは大人な対応だ。

 なんか俺が一番子供っぽい感じに思えてきた。

 俺は昨日のロイに変わって少し気落ちをしながら、ウィルと一緒にロイの後ろを歩き食堂へ向かった。

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