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間話 傷心のロイ 前編

 今日はいろいろあった。

 あのカルザルとか言う男……まだまだ本気ではないだろう。

 それに奴に問われた『戦う意味』という言葉。

 奴に言われて俺は『世の中の平和』と答えた。

 それに偽りはない。


 「ふぅ〜」


 俺の顔を撫でる夜風か心地よい。

 まさか宿屋の裏庭でこんな感傷的になる事が自分にあるなんて思わなかったな。

 でも、酒場でウィルに言われた事、そしてハルの今までの行動……それを考えると俺は覚悟……いや、決意と言うものが足りないのではないだろうか?

 ハルは自分の生まれてから今までの事、そして力を受け入れてその上で向き合い、決意をし先に進んでいる。

 ウィルとソニンも同様にイストニア帝国であった事、両親の死を受け入れ決意の元、先に進んでいる。

 シャーリーも両親の死を、アリィは……おそらくなんだかんだ言ってどんな事があっても俺の側にいると決意をしてくれているのだろう。

 でなければ、こんな危険な旅に同行する訳はない。

 何かしらみんな確固たる決意の元に行動している。

 それに比べて俺は……。


 「ロイ……」

 「ハルか……どうした?」

 

 ハルが宿屋の裏の庭にわざわざ来る用事もない。

 おそらく俺を気遣って来てくれてたのだろう。


 「いや、なんと言うか……まぁあんまり気にしすぎるなよ?」

 「大丈夫だ。まぁ正直多少は堪えたけどな」

 「そっか……」


 そう言ってハルは俺の隣に立ち、顔を上げ夜空を眺める。

 いつもなら俺がハルを励ましているのに今日は逆だな。


 

 「なぁ、ロイ。イストニア帝国との戦争の時にもこうやって二人で話したな」

 「……あぁ」


 そんな事もあったな。

 あの時のハルは自分の力の使い方が正しいのか、人を殺してしまうのではとかいろいろ悩んでいたように思う。


 「……あの時、俺はロイに声をかけてもらって助かった。正直いろいろ悩んでたからな」

 「……そうか、それならば良かった」

 「んー……ま、まぁ俺はロイみたいにうまく伝えられないけど、何かあったら相談しろよ? おまえは一人じゃないんだからな? おまえはそれを俺に教えてくれたんだから。だから、一人で抱え込むなよ」


 ハル……こいつは本当に真っ直ぐな奴だ。

 まぁこんな裏表のない奴だから俺も小さい時から心を開いているんだろうけどな。


 「ふっ、まさかハルに慰められる日が来るとはな」

 「う、うっせい! じゃぁ俺は行くからな! 早く寝ろよ?」

 「あぁ」


 全く……俺も素直じゃないもんだ。


 「あっ、ロイこれ」


 立ち去ろうとしていたハルが立ち止まり、振り返って異空間から何かを取り出し俺に投げてきた。


 「これは……」

 「剣折れただろ? まぁロイは魔力と魔法の両方まとわせるからな。おそらくそれでも長くは保たないかもしれないけど……ロイの使い方に耐えられる武器をどっかで打ってもらわないとな。じゃぁな!」


 そう言ってハルは立ち去っていく。

 俺はハルのくれた剣を見る。

 シンプルな造りだけど見事なまでに輝く刃……これは相当の業物だろう。

 ハルが作ったのだろうか。

 でも、これでも保たないのか。

 まぁ、武器の能力の問題もあるかもしれないけど、カルザルと戦う時に足りなかったのはそれだけじゃないだろう。


 「ロイ君……」


 剣眺めていると後ろから呼ばれ、振り向くとそこにはアリィがいた。

 

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