第百四十一話 ラース教皇国での出来事 その4
メイファちゃんの姿が見えなくなった後、ウィルが俺たちの方へ向き直る。
「な、なんだ?」
ウィルが珍しく動揺し、狼狽えた様子で俺たちに問いかける。
まぁ、俺たちが微笑ましくウィルを見ていたせいだろう。
それに、ソニンに至っては涙を流している。
「お兄様……さすが私のお兄様ですわ! 強さだけじゃなく優しさも兼ね備えて……お兄様を誇りに思います!」
かと思ったら、涙を流しながらウィルに抱きついた。
ウィルは言葉を発する事なく、ソニンの頭を撫でている。
まぁ、悔しいけどさっきのあの光景を見たら純粋に優しい奴だと思うし妹なら誇りに思うだろう。
「三日後だな」
「ん? あぁ、すまない。勝手に決めてしまって……」
ウィルはバツが悪そうに謝罪の言葉を口にする。
「なぁに、どっちにしてもゴルゾーラ教について聞き回ったりしないといけないし。それに思ったんだけどラース教は白のローブ、ゴルゾーラ教が黒のローブ。なんか関係ありそうじゃないか? もしかしたら全然関係ないかもしれないけど」
俺の言葉にみんなは考える様子を見せた。
「……まぁただ単に黒のローブってだけかもしれないけど闇と光……そして同じ宗教だからゴルゾーラ教について情報収集すると同時に調べてみても良いかもな」
口を開いたのはロイだった。
ロイの言葉にみんな異論はないようで、ゴルゾーラ教の情報収集と一緒にラース教の事も調べてみる事になった。
「じゃぁとりあえず宿を取ろうか!」
俺の言葉にみんな頷き宿を探す事にした。
俺はいつものロイならウィルにからかいの一つでも冗談で入れるだろうところに何も言わないのが気がかりだった。
やっぱりロイは悩んでいるんだろう。
とりあえず今日はお酒を解禁するか。
そう思いながらみんなと一緒に宿を探して街中を歩いた。




