第百三十九話 ラース教皇国での出来事 その2
「え〜っと……」
メイファちゃんは下を向きながら言いにくそうにしている。
そんなメイファちゃんを見たロイはメイファちゃんの前に屈んで顔を覗き込む。
「メイファ……言いにくいなら言わなくてもいいが、力になれる事ならするぞ?」
ウィルの口から思わぬ言葉が出た。
こいつ……やっぱりいい奴じゃん。
なんだろう……物凄くかっこ良く見える。
「お兄ちゃん……」
メイファちゃんはウィルを見つめ言葉を発しようかどうか迷っている。
そんなメイファちゃんをウィルは微笑みながらじっと待っている。
こいつ……こんな顔もできるのか。
「実はメイファ孤児院で暮してるの。先生がお金が足りないって……それと今度クリフが誕生日だから何か美味しい物食べさせてあげたいなって思って……銀貨って一番高いお金なんでしょ? だから……」
メイファちゃんは下を向きながら、言葉を口にする。
そうか、そんな理由があったのか。
「そうか。メイファは頑張ってるな」
ウィルはそう言ってメイファちゃんの頭を手で撫でる。
「うん! メイファ、お姉ちゃんだから! メイファは五歳でクリフは三歳で弟だから美味しい物食べさせてあげたいの!」
メイファは顔を上げ満面の笑みで答える。
やっぱり子供の笑顔っていいな。
周りを見るとロイ、アリィ、シャーリー、ソニンも微笑みながらウィルとメイファちゃんを見ていた。
「でもメイファ、あまり高い値段売るのはダメだ。それは下手すると悪い事になってしまう」
「ごめんなさい……」
ウィルの『悪い事』って言葉に反応したんだろう。
メイファちゃんは一転してしゅんとして呟く。
そして、メイファちゃんはポケットに手を入れてがさごそし出した。
もしかしたら銀貨を返そうとしているのだろうか?
そんなメイファちゃんの手をウィルが優しく止めた。
「それでも、メイファは先生やクリフ、みんなの為にしようとした。それに今回でダメな事も分かっただろ? 次からしなければ大丈夫だ。それとこのお金はお兄ちゃんからメイファと先生とクリフにプレゼントだ。その代わり俺たちみんな誕生日会に呼んでもらえるか?」




