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第百三十八話 ラース教皇国での出来事 その1

 なんでリンゴ売り?

 と一瞬俺の頭の中をよぎった。


 「リンゴ? いくらだい?」

 「銀貨一枚!」


 銀貨一枚!?

 高過ぎる!

 一応値段聞いてみたけどこれは高い!

 普通ならリンゴ一個で青銅貨一枚から二枚くらいだろう。

 少女が腕にかけている小さな籠の中には籠いっぱいのリンゴが入っている。

 もしかしたら全然売れていないのかもしれない。

 まぁ詐欺価格だし……。

 俺がそんな事を考えているとウィルが動き出して少女の目の前に屈んだ。


 まさか……?

 ガンを飛ばすつもりか!?

 やめろ!

 いくら詐欺だとしても純な少女にそんな事は……!!

 もしそうだとしたら、最悪世の中の適正価格を教えた俺が最終的に止めなければならない。

 俺がそんな風に思って固唾を飲んで見守っていると、みんなも同じ心境なのだろうか?

 俺と同じように固唾を飲んで見守っている。


 「お嬢ちゃん、名前は?」

 「メイファ!!」


 少女は眩しいくらいの笑顔でウィルに答えている。

 それに引き換えウィルは無表情だ。

 ウィルやめろ!

 名前を聞いて逃がさないようにするつもりかもしれないけど、そのメイファちゃんはきっと悪い大人に騙されているだけだ!!!


 「メイファか……」


 ウィルは呟くと腰に手をやる。

 まさか!?

 短剣を出すつもりじゃ……!?


 「ウィーー」

 「これで足りるか?」


 俺がウィルの名前を呼び、止めようとしたところ、ウィルは腰の皮袋から銀貨を片手いっぱいに掴んで取り出した。


 「ありがとう! お兄ちゃんちょっと待って!」


 メイファちゃんはそう言うと、一、二、三と銀貨の枚数を数えている。

 ……ウィルを疑った俺がバカだった。

 なんだろう。

 凄く悪い事した気分だ。


 「お兄ちゃん、リンゴは十個だから五枚多いよ? はい!」


 そう言ってメイファちゃんはウィルに五枚の銀貨を返す。

 ウィルはそれを無言で受け取り、リンゴも合わせて受け取り俺たちに配った。

 俺はそれを呆気に取られ無言で受け取る。


 「お、おう」

 「あ、ありがとう」

 「お兄様……」

 「あ、ありがとうございます」


 ロイ達もあっけに取られたのか反応に困っているようだ。

 うぅ〜……なんか分からないけど、目に涙が浮かびそうだ。


 「メイファ」

 「何? お兄ちゃん?」


 俺たちにリンゴを渡した後、ウィルはまたメイファちゃんに向き合って呼びかけた。


 「リンゴ……なんでその値段なんだ? 理由があるんだろ」

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