第百三十五話 ラモル山での出来事 その16
「ロイ! ウィル! アリィ! ソニン!」
俺はシャーリーと一緒にみんなところへ戻り、努めて明るくみんなに声をかける。
俺の声に合わせ、みんなが俺に視線を送ってくる。
ロイ以外は……。
「みんな無事だったみたいだな! 良かった」
「ふん、ハルも無事みたいだな」
「ハル! もっと早く帰ってきなさいよ! ……まぁ無事で良かったわ」
「ハル君……無事で良かった」
相変わらずソニンは辛口だった。
でも、元気そうで良かった。
ウィルも普段と変わらない。
様子が違うのは少し元気がないアリィと……。
「ロイ……大丈夫か?」
俺は馬車の近くの岩に腰掛けて顔を伏しているロイに声をかける。
おそらくカルザルにいいようにやられたショックを受けているのだろう。
今までロイは苦戦らしい苦戦をしてなかった。
まぁ俺やルイーズさん相手ではロイも負ける事もあるけど、見知らぬ相手に、しかも剣を折られほぼ一方的にやられたのだから……。
「うん? ハルか。悪いな。ちょっとぼけ〜っとしてた。その様子だと大丈夫だったみたいだな。さすがハルだ」
ロイは顔を上げ、微笑みながら言葉を発するけど、どこかぎこちない。
おそらく無理をしているのだろう。
今思えば、俺は今までロイの弱いところを見ていない。
もしかしたら今までもあったのかもしれないけど俺は気づかなかった。
逆に俺が悩んだり落ち込んだりしている時はロイがいつもそれとなしに声をかけてくれた。
だから、今回は俺がロイに言葉をかけないと……でもなんて言葉を……?
「ロイーー」
「さぁ、先を急ぐか! こんなところにいてまた待ち伏せされたらたまらんからな!」
そう言うとロイは立ち上がり、馬車を引いて歩き出した。
どうしたらいい?
俺はどうする事も出来ない自分に腹が立った。
「ロイ君……」
後ろではアリィが心配そうにロイの後ろ姿を眺めている。
俺はウィルを見ると、ウィルは無言で頭を左右に振る。
結局俺たちはどうする事も出来ずに、ロイに続いて歩き出した。




