第百二十三話 ラモル山での出来事 その4
「言われなくても……見せてやるよ!」
ロイが先手を取るように、身体強化をし、魔力を剣に纏わせてカルザルに斬りかかる。
「……あまい」
しかし、カルザルはその攻撃を難なく剣で受け止める。
「まだまだ! そっちこそあまいんだから!」
「油断大敵です!」
ロイとカルザルが鍔迫り合い状態のところにアリィとシャーリーの水竜と水虎が襲いかかる。
水竜と水虎がカルザルを捉えるその直前、カルザルの剣に黒いオーラが漂った。
次の瞬間、カルザルは軽々と一気にロイを弾き飛ばし、後方へ跳ぶ。
水竜と水虎はカルザルを捉える事なく、その場から二人の元へ戻る。
「軽い……軽過ぎる。ロイと言ったか? お主が戦う理由はなんだ?」
「なに!?」
カルザルがロイに問いかけている。
戦う理由……どういう事だ?
俺はいつでも援護できる態勢を取りながらロイを見守る。
カルザルが罠を仕掛けているかもしれない以上、俺はカルザルの動きを注視しておいた方がいい。
ウィルとソニンは後方を警戒してるから、カルザルの動きをずっと見ている訳にはいかないからだ。
「お主の戦う理由……それはなんだ?」
「ふん、そんなの世の中の平和の為じゃないか!」
ロイは言葉を放つと再度、カルザルに斬りかかる。
しかし、カルザルはまたも漆黒の剣でそれを受け止め、弾き返す。
「……お主に用はない」
カルザルはそう言うと漆黒の剣に黒いオーラを漂わせた。
そして、次の瞬間ロイに向かって斬りかかる。
「くっ!」
ロイは剣に魔力を最大限纏わせて受け止めようとした。
しかし……
「!?」
「ロイ!!」
「ロイ君!?」
ロイの剣はカルザルの斬撃に耐えられず、折れてしまった。
その衝撃で片膝をついたロイはカルザルを見上げる。
「……」
「……」
そのまま二人は無言で見つめ合う。
「お主は邪魔だ。どいてろ」
「……そう言われて簡単に引き下がるかよ!」
「ロイ!! 無茶するな! 下がれ!」
「ロイ君!!」
俺とアリィが叫ぶ中、ロイは無詠唱で魔法を発動させる。
炎の槍がカルザルを囲むように、形成され襲いかかる。
「……無駄な事を」
カルザルはそう呟くと漆黒の剣から黒いオーラを発生させ、次はその黒いオーラを、自分の周囲に纏わせる。
炎の槍は次々とカルザルに向かい、轟音を響かせる。
「せっかく生かしてやったものを……」
「くそ!」
轟音の後、カルザルは無傷で姿を現した。
あの黒いオーラが魔法を防いだのだろうか。
「……これで終わりだ」
カルザルが漆黒の剣に黒いオーラを纏わせてロイに斬りかかった。




