第百二十二話 ラモル山での出来事 その3
「力を司る司祭カルザル……」
ゴルゾーラ教のカルザルという男は意外にも素直に自分から名を名乗った。
こいつはいったい何を考えている?
自分から姿を見せ、自分から名を名乗る……。
何がある?
「カルザルと言ったか……? おまえは何を考えている?」
「……何もない。ただ手合わせ願いたいだけだ」
俺の隣にいたロイがカルザルに問いかけ、カルザルが答える。
今までのダビド、ダグマルを見る限りこのカルザルの言葉をそのまま鵜呑みにするのは危険な気がする……でも、こいつは何か違う気もする。
「……ゴルゾーラ教は何を考えている? なんで魔人化や魔獣化を知っている!? おまえ達は何者なんだ!?」
俺はもしかしたら話が通じるかと思い、カルザルに問いかける。
「……それは我が預かり知る事ではない。 我はただ戦うのみ。……話は終わりだ。さぁ剣を抜け。お主達の力、我に見せてみよ!」
カルザルはそう言うとローブから剣を取り出し構えた。
その剣はまるでこの世の闇を凝縮したような漆黒の色をしていて禍々しい魔力を纏わせている。
「……やるしかないか。でも、これは一筋縄ではいかないかもな」
「確かにな。ロイ、あの剣は気をつけた方がいい」
「あぁ、あの剣は普通ではないな。こちらも魔力を纏わせなければ太刀打ち出来ないだろう」
俺とロイは言葉をかわし、剣を構える。
俺の後ろでは、アリィとシャーリーが魔法障壁を張った上で水竜と水虎を従え、さらに後ろではウィルも剣を構え、ソニンも魔法障壁を張りいつでも魔法を放てるように構えている。
「さぁ、お主達の力、我に見せてみよ!」




