第百二十話 ラモル山での出来事 その1
前方を見ると確かにぼんやりと人影らしきものが見える。
しかし、まだ距離もある為、ハッキリどうかは分からない。
「……こんなところに人影ってあると思うか? 普通はラモル山を迂回するんだろ? まぁ万が一を考えるとあり得ると思うけど……でも、あれを人影だとしたら明らかに立ち止まってるぞ?」
「確かにハルの言う通りだな。一般的には通らない道だ。そこでもし立ち止まって俺たちを待ち受けているとしたら……良い展開ではないだろうな」
先ほどまで俺と目を合わせていたロイも前方を見て人影らしきものを見て口にする。
「そうだろうな。しかし、盗賊にしては堂々とし過ぎている。他の線を考えると……どうなのだろうな」
続いてウィルが言葉を口にする。
今のところ、人影らしきものが人影かはハッキリしないけど俺たち三人は人影だと思っている。
俺たちは警戒しながらも、その人影らしきものに近づいていく。
すると、ぼんやりした輪郭が徐々にはっきりもしてきた。
……これはやっぱり人影だ。
こんなところに誰が……。
「……どうやら人影で間違いなさそうだな」
「そうみたいだな……。しかし、こんな場所に誰が……?」
「通りすがりの人だと良いけど……」
俺はロイとウィルの話に口を挟んだけど、自分でもただの通りすがりの人だとは思わなかった。
さっきのロイの一言がフラグって奴になったんだろうか。
しかし、ここで引き返すにしても、向こうも俺たちの姿を確認しているはずだし、相手が最初から俺たちを待ち受けているのだとしたら、背後を見せる事になるし危険だ。
ここまで来た以上、相手を確認するしか他はない。
俺たち男三人は無言で目を合わせて頷く。
そして、馬車の中の三人にも声をかける事にした。
「だから、シャーリーもねー……」
「話の最中ゴメン。今、前方に怪しい人影らしきものがある。それが何者か分からない以上、ここで引き返し背を向けるのは危ない。だから、このまま行こうと思う。俺たち三人が警戒してるけど、三人もいつでも魔法障壁を発動できる準備を……」
「……分かったわ」
「ふん、どうせまた盗賊とかじゃないの?」
「ソニンちゃん、それならハル君とかがここまで神経質にならないと思う? ……だから、言う通りにしましょ?」
「シャーリーお姉様が言うなら……分かりました」
そう言うと女子会で盛り上がってた三人も警戒態勢に入った。
盛り上がってた話を途中で止めてしまって申し訳ないけど、何やら危険な気がする。
でも、途中から話を聞いてなかったけど『シャーリーも』ってどんな話に進んでいたんだろうか。
……気になる。
でも、今はそんな場合じゃない。
俺たちは警戒しながら、その人影らしきものに近づいて行った。




