第百十九話 ラモル山を超えます
「ダリウスさんとメリーさんはうまくいってるかしら?」
「どうでしょう? あの単細胞並の自分中心の勢いに任せた行動が少しでも直っているといいのですけど」
「で、でも、ダリウスさん一途そうだし! うまくいって欲しいなぁ〜……」
「まぁ、シャーリーは一途な想いを受け続けて結ばれたもんね! そしてシャーリーも一途だったし! 周りから見てたら逆にハル君は勢いが足りなかったから……ハル君とダリウスさんを足して二で割ったくらいがちょうどいいのにね!」
「もう……! アリィひどい! ハル君は私の事いろいろ考えてくれてたんだと思う! それに勢いとかじゃなくて真剣に考えてくれてたから……私は嬉しかったの!」
「ゴメンゴメン! ちょっと言い過ぎたかな? でも、こうやってシャーリーから想いを語られる日がくるとは……」
「こういう時のシャーリーお姉様は本当に言葉に重みがあると言うか気持ちがこもってますものね!」
「!? もぉぉぉ〜!!! 二人して!!!」
……馬車の中では絶賛女子会の最中みたいだ。
俺たち男三人は外で馬を引きながら周囲を警戒しているけど、馬車の中の声が丸聞こえだ。
「くくくっ! ハル、やっぱりおまえは勢いが足りないらしいぞ?」
「ハル、男らしくいく時はいかないとな。戦闘もそうだろ? 相手の様子を伺ってばかりでは勝機は生まれない」
「う、うるさい!! 俺には俺なりの考えがあったの!!!」
全く……!
話を聞いててダリウスさん可哀想にって思ってたらなんでいきなり俺とシャーリーに飛び火してるんだよ!?
それにウィル、恋愛は戦いとは違う!
……いや、戦いに通じるものがあるか?
でも、恋愛してない奴に言われたくない!
くそ!
ウィルが恋愛した時に知らしめてやる!
「まぁ、それにしても道中は平和だな。……盗賊の件はあったけど、順調過ぎてこわいくらいだ」
俺がいろいろ考えているのをよそに、何事もなかったかのようにロイは話を変える。
まぁ確かに今までの道中は順調だ。
特に大きな問題もなく進んでいる。
荷物も俺の異空間魔法によって、何不自由なく運べているし食料とかも問題ない。
さらに、自惚れじゃないけど俺たちの強さからすればこの辺りに現れる魔物は正直苦にもならない。
実際、ゴルゾーラ教の情報を掴めていない以外は旅は順調だった。
「ん? なんだ? あれは人影か?」
ウィルが前方を凝視しながら言葉を発する。
俺もウィルの言葉を聞きロイを見ていた視線を前を向けるとそこには人影らしきものがあった。




