第百十八話 メイリーク街道を進みます
俺たちはダリウスさん、コールさんと別れを済ませた後、コルト都市国家とラース教皇国を結ぶメイリーク街道を進んでいる。
コルト都市国家とラース教皇国を結ぶメイリーク街道は普通に行けば二日かかるかどうかの距離で、比較的短い距離だ。
その道中にはラモル山と呼ばれる小さな山を越えるか、ラモル山を迂回するルートがある。
一般的にはラモル山を迂回するルートで二日だけど、ラモル山を越えるルートで行けば一日かからないくらいで行ける。
ラモル山は魔物が出る為、あまり人は通らないけど、俺たちからしたら魔物は問題ないし、むしろ、時間がもったい。
こうしている間にもゴルゾーラ教が何かをしているかもしれないと思うと先を急ぎたかった。
それはみんなも同じようだったのでラモル山を通るルートで行く事にした。
やっぱり、みんな人の死を目の当たりにした衝撃があるのだろう。
そして、俺たち今ラモル山を進んでいる。
ラーク大森林ほど薄暗くはないけど、人も通らない事もあり、道は整備されていないし、木々も覆い茂っている。
そんな中でも、馬車は進んでいく。
さすが、国が用意した馬車だ。
馬もさる事ながら、車輪とかは魔法宝具なのかもしれない。
「魔物と言っても俺の敵ではないな」
「雑魚相手に余裕こいてて足元救われるなよ?」
「ふん、おまえに言われなくても分かってる。……いずれロイ、おまえを越えてやる」
ウィルとロイが話しながら戦っている横には赤いゴブリンの死体が転がっている。
ゴブリンは色によって強さが変わるけど、どちらにしても今まで戦ってきた相手には遠く及ばず、俺たちには問題ない相手だ。
ちなみにこの赤いゴブリンはランクEランクで駆け出しの冒険者でもなんとか一人で倒せるレベルだ。
そんな相手にウィルとロイが遅れを取る事がある訳はなく、次々と倒して行く。
ちなみに女性三人は馬車の中に入ってもらっている。
ゴブリンの死体とは言え、この前の光景を見たばっかでショックが残っているかもしれないし……まぁ、紳士的振る舞いって奴だな。
悪く言えば働き蜂……いや、違う違う。
これは、自らの意思なのだから。
でも、将来家族の為に自らの意思で働き、その命を全うする男って働き蜂に通じるものがあるのだろうか?
家では嫁が子供と待っていて、その為に働く男……ダメだ深く考えると虚しくなってくる。
「おい、ハル! 俺たちばっか働かせなてないでおまえも働け!」
「働かざるもの食うべからずだ」
「悪い悪い!」
俺は二人の言葉に従い、四方八方から現れてくるゴブリンの退治に加わった。
俺は心の中で、ロイとウィルの言葉を聞いてますます自分達は将来このまま働き蜂になる運命なのかもしれないと悟った。




