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間話 別れの時&帰還

 「それじゃぁ、依頼の達成を祝って……」

 「「「乾杯!!」」」


 ダリウスさんの乾杯の音頭で宴会が始まった。

 俺たちは今コルト都市国家に来て初日訪れた酒場で打ち上げをしている。

 依頼達成の報酬はコールさん厚意により増額され、一人辺り、銀貨50枚となった。

 コールさんは、


 「君達の言ってる通りだとしたら、戦闘狼(ウォーウルフ)のランクはCランクどころではなくB……いや、下手すればAランクに匹敵するかもしれない。

それをさらに集団を倒したと言うのだから、これくらいは当然だろう。むしろ少ないと思うがいかんせん、証拠が上がらない以上これで許して欲しい」


 と、言っていた。

 本来なら証拠もなく、目撃者もいないのだからノルマが達成されたかどうか分からないし、これはコールさんの厚意だろう。

 まぁ、ここは素直に甘えておこう。

 それにみんな表面上は元気だけど、内心では他の冒険者パーティーが全滅した事に心を傷めている。

 ダリウスさんも例外ではない。

 だから、今日だけはダリウスさんとの別れも兼ねてパーっと飲むのも悪くない。


 「いやぁ〜それにしてもおまえさん達の強さには参った! 反則というか常識外れだな!」


 乾杯と同時にエールを一杯飲み干したダリウスさんが言葉を放つ。

 まぁ、俺はもう言われ慣れたけど。


 「まぁ、常識外れのハルといれば多少は……な」

 「おい、ロイ! 俺から言わせたらおまえは俺がやってない事もやってるから十分常識外れだぞ!」

 「ふん、抜け駆けとはズルい奴だ。正々堂々としろ」


 ロイの言葉に俺とウィルがすかさず口を挟む。


 「抜け駆けとは違うな。才能の差だ」

 「何を……!? いいだろう、表に出ろ」

 「いや、酒が俺を待ってるから無理だ」

 「まぁお兄様、今日は楽しく飲みましょ?」

 「そうよ! せっかくだから楽しく飲みましょ? お酒の前でのケンカはお酒への冒涜よ?」

 「……ふん」


 いつもの流れになるかと思ったら意外と素直に収まったな。

 でも、ロイの奴アル中じゃないだろうか?

 そこまで酒に固執しなくても……。

 それにアリィもお酒への冒涜ってなんだ!?

 この二人は創造神アテンの信仰より、お酒への信仰の方が深そうだ。


 「ははは! 若いな! まぁ俺からしたらお嬢ちゃん達も人並み外れてるけどな! 大変だな、野郎共は!」


 ダリウスさんは大声を出して笑っているけどこれは……。

 すると、俺の予想通り場が氷ついた。


 「ダリウスさん……今のどういう事でしょう?」

 「何よ! あんたが弱いだけじゃない! それに女心もっと勉強しなさいよ!」

 「えぇー……私、いつの間にそんな風に思われようになったんでしょうか……」


 いつの間にかエールを飲み干したアリィ、シラフのソニン、珍しくもう果実酒を飲み干したシャーリーがダリウスの言葉に食いついた。

 アリィはともかくシャーリーも今日はペースが速い。

 大丈夫だろうか?


 「い、いや、誉め言葉だって! その強さ羨ましいんだぜ?」

 「女性は強さなんて誉められても嬉しくありません! まぁある程度までは良いですけど……仮にもパートナーを困らせるような事はしてません!」


 ダリウスさんの言葉にすかさずアリィが返す。

 アリィよ……十分迫力が……。


 「ハル君、何か!?」

 「なんでもありません!!」


 俺が心の中でいけない事を考えていると見透かされたようにアリィに声をかけられた。

 でも、本当の事だし……。

 ロイの方を向くと俺にこの話を振るなと言わんばかりに、エールを飲み干し、もう一杯注文に取り掛かっていた。

 横ではウィルも同じようにエールを飲み干していた。

 なら俺も……。


 「エールもう一杯!」


 俺はエールを飲み干してもう一杯注文し、ダリウスさんを見捨てた。


 「だから! 女心はねぇー……!」

 「恋は大声ばっか出してもダメなのよ! あなた戦ってる時みたいに勢いばっかじゃない!」

 「ダリウスさん、女性って雰囲気もー……」


 いつの間にシャーリーも入ってダリウスさんに女心と恋愛談義が始まっていた。


 「よし、たまには男三人の絆を深めるか」

 「そうだな」

 「ふん、まぁいいだろう」


 俺、ロイ、ウィルはダリウスさんを見捨てる事にした。

 というか今あそこの話に入るのは自殺行為だ。

 ダリウスさん……ゴメン。

 俺は心の中でダリウスに手を合わせてからロイとウィルと乾杯をして飲み直し始めた。


 「た、助けてくれぇぇぇ!!!」


 ダリウスさんの声が響く中、宴会は進んで行った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その頃、とある場所では……。


 「ただいま戻りました」

 「……ダグマルか。して、どうだった?」

 「はっ! ……実験は成功致しましたが、例のハルに関しては……申し訳ありません」


 知の司祭、ダグマルはそういうと大司教と呼ばれている男に深々と頭を下げる。


 「そうか……」

 「会ってみて、思ったのは奴はかなりの力を持っていると……そして、その仲間達も相当の力を持っています」

 「……そうか。まぁ良い。それより、お主は次の計画を進めろ」

 「はは! 大司教様の仰せの通りに。して、ダビドは?」

 「奴は今別件で行動中だ。しばらくは留守になる。だから、しばらくは大きな行動はせぬ」

 「左様ですか……」

 「……」


 大司教と呼ばれる人物とダグマルの様子を少し離れたところで黙って見ていた男は、踵を返しその場から姿を消した。



 

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