表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/494

第百十三話 コルト都市国家での出来事 その28

 「二階の会議室でギルド長がお待ちです。どうぞお上がりください」


 俺たちはあの後、ラーク大森林の前で待機していたギルド職員に森の中であった事を説明した。

 ギルド職員は最初半信半疑だったけど、しばらく待っても冒険者のパーティーが一組も帰って来ない事もあり、証拠を得る為、森に入る事になった。

 しかし、俺たちが報酬目当ての為に他のパーティーを手にかけたという疑惑も感じた職員は、空に救急信号を放った。

 魔法宝具(マジックアイテム)で放たれたそれは空に向かって虹色の煙発生させた。

 青い空に向かって伸びて行く虹色の煙は、森の中で亡くなった冒険者の魂のように思えた。


 一時間少々すると、応援のギルド職員、そしてコルト都市国家の治安を維持する衛兵達が到着した。

 俺たちはその人たちと一緒にラーク大森林へ入り、全滅した冒険者のパーティーを氷漬けにした場所へ向かった。

 その光景を見たギルド職員達は言葉を失い驚いていたけど、遺体の様子を見て、損傷箇所が牙のようなものによるものだと判断され、俺たちの疑惑は晴れた。

 しかし、戦闘狼(ウォーウルフ)の死体がない為、それ以外の判断は出来ないという事で俺たちはコルト都市国家へギルド職員達と一緒に戻ってきた。

 ちなみに帰る前にさらに魔法宝具(マジックアイテム)で応援を呼び、駆け付けた衛兵やギルド職員の人たちがラーク大森林の中を調べている。

 おそらく魔獣化した戦闘狼(ウォーウルフ)はもういないだろうし衛兵やギルド職員達も大丈夫だろう。

 知の司祭と言っていたダグマルの事だし、証拠を残す事はしていないと思う。


 そうして、俺たちはギルドで待機してた訳だけど、ギルド長のコールさんに呼んでいるという事で、受付嬢の言う通りギルド会議室のある二階へ登ろうとした。


 「……みなさん、ご無事でなによりでした」


 俺たちが、階段へ向かおうと受付嬢の横を通り過ぎようとしたところで受付嬢が声をかけてきた。


 「おっ! メリーちゃん俺の事、心配してくれてたのか?」

 「違います。ダリウスさんの周りの方達の心配をしていただけです」


 あっ、この受付嬢はメリーさんって言うのか。

 今になってやっと名前を知ったな。

 あっ、いけないいけない。

 あまり気を向けちゃいけない。


 「ちぇっ! ちょっとくらい心配してくれても良いのに」

 「心配していましたよ? 業務の範囲内で」

 「かぁ〜!! メリーちゃんは今日も辛口だね!」

 「……まぁ知った顔が減るのは少し悲しいので多少は心配しましたけど」

 「おっ! じゃぁ今度食事にでもーー……」

 「無理です。……まぁ私に相応しいAランクにでもなられたら考えます」

 「マジか!? よしやってやるか!」

 「まぁ、ダリウスさんには難しいと思いますけど」

 「そんなのやってみないと分からないだろ!? よし! 約束だからな! 行くぞ!」


 そう言ってダリウスさんは階段を登り出した。

 いや、待ってたのは俺たちですけど……。

 それにしても、メリーさんも強気だし、ダリウスさんもこの前と調子が違うな。

 もしかしたら、この前も俺たちと来る前に同じようなやりとりがあったのかもしれないな。

 まぁ、ダリウスさんとメリーさんの関係が、分かったしよしとしとくか。

 俺たちもダリウスさんに続いて、階段を登った。

 階段を登る直前、視界の端に映ったメリーさんの口元が僅かに微笑んでいたのが印象的だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ