第百十二話 コルト都市国家での出来事 その27
「……一体何がどうなっているんだ?」
戦闘狼を倒し終えた後に、ダリウスさんが俺に問いかけてくる。
「とりあえず一度森を出てギルドの方と合流しましょう。その時に一緒に説明させてもらいます」
「そうだな。ここにいるのは危険かもしれないしな……っ!?」
見るとダリウスさんの脇腹から血が流れている。
身体強化をかけたとは言え、魔獣化した相手に無傷とはいかなかったのだろう。
傷は少し深く、ダリウスさんが手で怪我をしてるところを押さえているけど、血は止まる事なく流れている。
「ダリウスさん!?」
「なぁ〜に! 大丈夫だ! これくらー……」
「動かないでください!」
俺がダリウスさんに治癒魔法をかけるより先に、シャーリーがダリウスに駆け寄り治癒魔法をかけた。
「こりゃぁ……ありがとうな、嬢ちゃん」
「ダリウスさんは私達を守ってくれてたんだから当然ですよ」
シャーリーはダリウスに微笑みかけながら、言葉を発する。
「へっ! こりゃドラゴンキラーが惚れるのも無理ないな!」
「!?……もう!! ダリウスさん!!」
「へへ! すまねぇすまねぇ!」
シャーリーは顔を赤くしながら、ダリウスさんに怒っている。
俺は俺でロイとアリィから意味深な視線を送られている。
……とりあえず、無視しておこう。
ダリウスさんの治療も終わり、俺たちは一同揃って森を出る事にした。
本来なら俺の魔法で出口に行ってもいいけど、あまりいろんな人の前でやらない方がいいだろう。
俺たちは来た道を戻っていく事にした。
俺はダグマルがいた場所に急いでかけつけた為、どっちから来たか分からなくなっていたけど、ここは冒険者経験の長いダリウスさん。
向かう途中に木に目印をつけたり、目星になるものを見つけたりしてたみたいで、迷う事なく森を抜ける事が出来た。
年の功……いや、経験の差と言っておいた方が良さそうだ。
帰りの道中、俺たちはさっきまでと違い、また暗い雰囲気に包まれながら無言で歩いていた。
それは途中、最初に見つけた全滅した冒険者のパーティーのところを通ったからだ。
ダグマルの言動からおそらくこの他のパーティーも被害にあっているだろう。
それを思うと悲痛な気持ちになる。
やっぱり人の死を目の前で見るとショックを受ける。
みんな言葉にはしていないけどやはりショックを受けていたのだろう。
そして、また、ゴルゾーラ教により犠牲者が出た。
奴らは何を考えているのか?
でも、人の命を弄ぶ以上許せない。
必ず奴らを止める。
「……何が起きたんだ?」
森を抜けたところにいたギルドの職員は俺たちの様子から何かを感じ取ったのだろう、言葉をかけてきた。




