第百十一話 コルト都市国家での出来事 その26
「ハル、おまえもやるな!」
「ロイばっか良い格好させてられないからな!」
俺とロイは戦闘狼の集団の中に突っ込んだ後、お互いの背を預けながら四方八方から襲いかかってくる戦闘狼を斬り付け、時には魔法を放ち撃退していく。
俺の魔法により、スピードが鈍った戦闘狼は本来なら避けれるであろう魔法も命中し、その数を減らしていく。
「ハル君!」
「ロイ君!」
声のする方を見ると、最初の十頭を倒し終えたシャーリーとアリィが駆け寄って来ている。
その後ろにら左右を警戒するウィル、間にソニン、後方を警戒しているダリウスさんと続いている。
シャーリーとアリィが先頭を走って大丈夫かと思ったけど、よく見ると、二人の左右に水虎と水竜が周りを警戒しながら付き従っている。
これなら問題ないか。
それにしても、みんな無事で良かった。
「みんな行くわよ!」
「うん!」
「はい!」
「……分かっている」
「お、おう!」
アリィの一声で水虎と水竜が戦闘狼に標準を定める。
双方の召喚獣(?)は水牙や爪で戦闘狼に襲いかかる。
その水の牙、爪は鋭く、戦闘狼を切り刻む。
おそらく、圧縮された水流で出来ているのだろう。
水は使い方によれば、固いものでも削れる。
それにしても……いつの間にか指揮権がアリィに移ったんだな。
やっぱり最後には行き着くところに行き着くのか。
ダリウスさんが少し可哀想に思えてきた。
でも、仕方ない。
俺たちだって、あまり反抗できないのだから。
そして、その後に続いてソニンの風の刃が戦闘狼を襲い、ダリウスさんはその三人の周りを警戒している。
ウィルは魔力操作して俺とロイの戦列に加わった。
「ロイ……貴様、いつの間にあんなものを習得しただ?」
「ん? まぁちょっといろいろ試してたらな。おまえと違って才能かな?」
「な、なにを!?」
二人は戦いの最中だというのに言い合っている。
まぁ、余裕があるのはいい事だけど……。
「おい! 今は言い合ってる場合じゃないだろ!」
「ちっ!」
ウィルはさっきのはロイの一言で、火がついたのか怒濤の如く、戦闘狼を撃退していく。
それに続き、俺とロイも次々と戦闘狼を倒していく。
アリィ達も加わった事もあり、程なくして戦闘狼を全滅させた。
そして、案の定倒した戦闘狼はすべて、黒い霧となって消えていった。




