第百十話 コルト都市国家での出来事 その25
ロイと戦闘狼の距離が肉薄する。
俺はそれに合わせて、重力魔法と行動阻害の魔法を戦闘狼の集団に放つ。
おそらく、魔獣化して能力が上昇している分、完全には動きを止められないだろうけど、それでもスピードを抑えられたら、俺とロイなら大丈夫だろう。
まぁ集中して魔力を込めて放てば完全に動きを止められるかもしれないけど、あれだけの数をロイに任せるのはいけないだろう。
「おぉ!!」
前を行くロイを見て、俺は驚きの声を上げてしまった。
ロイの剣は魔力を纏わせるだけじゃなくて、その外に炎を纏っている。
そして、俺の魔法によって動きの鈍い戦闘狼に斬りかかると同時に左右から接近していた戦闘狼に剣から炎の魔法が飛んで行く。
剣から出た魔法に当たった戦闘狼は炎に包まれて燃え上がった。
あれってもしかして『魔法剣』だろうか。
でも、俺が『エターナル・ログ』で知ってる魔法剣は魔力と魔法を同時になんて使っていない。
なぜなら、魔力操作だけでも相当精密な操作がいるのに、それにプラスして魔法を纏わせるのは難しいからだ。
普通は属性攻撃が特別有効な相手に対しては『魔法剣』で対応する、言わば、魔力を纏わせた剣のサブ的ポジションだ。
なぜなら、魔力を纏わせた剣は万能だからだ。
『魔法剣』は魔法を纏わせるだけで切り味とかが上がる訳ではない。
なので、魔法剣はそれ程まで重要視されてこなかったみたいだ。
それをロイの奴は両方一緒に使うだけでもなく、そこから魔法を放っている。
あいつ……欲張り過ぎだろ。
メインとサブだけじゃなくて、魔法と言うメインを取り入れてダブルメインにサブ……近距離だけでなく遠距離攻撃も可能……最強だな。
ロイは戦いのセンスがあるのだろう。
まぁ小さい時からルイーズさんという超一流に剣術を習い、魔法は俺という特殊な人間から教わったからロイも常識の尺度では計れない存在になっているんだろうな。
ルイーズさんか、幸せにやってるだろうか?
浮気してケンカしてないといいけど……。
いや、今はそんな事を考えている場合ではない。
ロイにばっかり任せてはおけない。
「ロイ! おまえも無茶苦茶非常識なやつだな!」
「うるさい! ハルには言われたくない! それよりさっさと片付けて終わらせるぞ!」
ロイの奴、ムキになってやがる……いつも言われっぱなしだから、たまにはいいな。
俺は剣に魔力纏わせて、戦列へ加わった。




