第百八話 コルト都市国家での出来事 その23
ロイがダグマルに肉薄する。
しかし、ロイの斬撃がダグマルを捉える直前にダグマルは後方へ飛び、ロイの斬撃をかわした。
ダグマルは魔力操作を使ったのだろう。
普通なら避けられないタイミングだったはずだ。
やはりゴルゾーラ教は、無詠唱、魔力操作を物にしているようだ。
「ちっ!」
「今のはちょっと危なかったな。まさか、女達を置いてこちらを狙うとはな」
「あいにく、俺たちのレディはそこらの男より強いんでな」
ロイの言葉にシャーリー達の方を振り返ると、三人は立ち直ったのか、追い込まれた状況で奮い立ったのか、戦闘に参加していた。
アリィの水竜とシャーリーの水虎が、自分達を守るように周囲を警戒しながら、戦闘狼を威嚇している。
「よし! このままの調子よ!」
「うん! 私達も頑張らないと!」
アリィとシャーリーの水竜と水虎が襲いかかってきた戦闘狼を弾き飛ばす。
いつの間にそんな繊細な魔法を……あれってたぶん魔法に魔力操作してるよな。
……あれってもはや、魔法というより召喚魔法に近いんじゃないんだろうか?
俺の頭にそんな疑問が浮かんでいると、ソニンが叫んだ。
「ダリウスさん!! 邪魔! そっちは今私が狙ってるでしょ!?」
「お、おう」
どうやら、ソニンが魔法を放つ方向にダリウスさんがいたようだ。
ソニンが放つ魔法は姿形はないけど、無数の真空の刃が戦闘狼に襲いかかっている。
……ロイの言う通り、女性三人は強い。
ダリウスさんも戦闘狼に遅れを取っていない。
俺の身体強化の魔法が普通のより強力なのもあるけど、戦闘狼のスピードについていっている。
戦闘狼の突進に合わせ、鋭くバトルアックスを振る。
『ブンッ』という空気を切り裂く音が聞こえると同時に戦闘狼の体を真っ二つに切り裂く。
やっぱり、ダリウスさんは見かけによらず、元からスピードもあったみたいだ。
これから、問題ないだろう。
あとはさっきのロイの言葉が三人に聞かれていないのを願うばかりだ。
聞かれていた時は……俺たちは勝てるのだろうか?
いや、今はそんな事考えている場合ではない。
「こっちは任せろ! ハルとロイはその男を捕まえろ!」
「だ・か・ら! 邪魔しないで!」
「す、すまん」
ダリウスさんは俺とロイに叫んだ後、すかさずソニンに邪魔扱いされた。
……うん、この調子なら大丈夫そうだ。
シャーリーとアリィも実践になったらどうだろうと思ったけど動けているし、ウィルも戦列に加わっている。
戦闘狼も数を減らし、五頭程になっているし、あったはもう大丈夫だろう。
俺はウィル達に背を向け、ロイの横に立ち、ダグマルに向き合った。




