第百七話 コルト都市国家での出来事 その22
「シャーリー! アリィ! ソニン! 魔法障壁を!」
「はい!」
「りょーかい!」
「言われなくても分かってるわよ!」
俺の指示に、三人は魔法障壁を展開する。
戦闘狼のスピードと数から、前衛を抜いてシャーリー達に襲いかかる事もあるかもしれない。
それに合わせて、俺はダリウスさんに身体強化の魔法をかける。
「おぉ! 助かる!」
俺がかけた魔法によって、ダリウスさんもなんとか戦闘狼のスピードに対応できるだろう。
さっきの攻撃も速かったし思ったより俊敏なのかもしれない。
戦闘狼は一斉に襲いかかってくる。
まず、俺の右前と左前から同時に戦闘狼が飛びかかってきた。
俺は魔力操作して足に魔力を集める。
そして、まず右前から来る戦闘狼に向けて踏み込み、下から剣を切り上げる。
肉を断つ感触が剣を通して俺に手に伝わる。
戦闘狼は上半身が下半身を置き去りにして前へ飛ぶ。
胴体が半分に切り離された。
切り離された二つの体は地面に転がる。
もう少ししたらさっきみたいに消え去ってしまうだろう。
俺はすかさずもう一頭へ踏み込む。
しかし、そこにダグマルからの闇魔法、無詠唱で放たれた漆黒の刃が俺に襲いかかる。
俺は視界に入った漆黒の刃に気づき、寸前で止まる。
その隙を縫って、俺を襲おうとしてた戦闘狼はシャーリー達の元へ向かう。
「シャーリー!」
俺は叫んだ。
その瞬間、緑の髪をした影が戦闘狼を切り捨てていた。
「ふん、これくらい問題ない」
見るとウィルが魔力操作をし、戦闘狼を上回るスピードでかけ寄り、魔力を漂わせた剣で戦闘狼を倒していた。
ウィルの奴、ロイに鍛えられてだいぶ力がついたな。
しかも、属性的な加護でスピード勝負はウィルの土俵だ。
「……ダビドが教えていたイストニア帝国の者か。なかなかやっかいだな」
「俺も忘れてもらったら困るぞ?」
「むっ!?」
気づくとロイがダグマルに斬りかかっていた。




